禁煙による体重増加には腸内細菌の変化が関係している!

この記事のポイント


「タバコをやめると太る」という話を聞いたことはないでしょうか? 私自身はタバコを吸いませんが、愛煙家の友人も同じようなことを言っていました。

禁煙で太ってしまう理由として、「禁煙によるイライラを解消するためについ食べてしまう」「口が寂しくなるためついお菓子に手が伸びる」「ニコチンによる基礎代謝の刺激がなくなる」などがあります。

さらに、「禁煙によって腸内細菌バランスが変化して体重が増える」ということもわかってきました。

太ることを気にして、禁煙に踏み切れない女性も多いです。しかし、腸内細菌が関与しているのであれば、対策を立てることも可能です。そこで今回の記事では、禁煙と腸内細菌の関係について解説するとともに、禁煙するときの腸活のポイントについてお伝えしていきます。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。


1.タバコをやめると体重が増える?!


「禁煙による体重増加には腸内フローラ(腸内細菌全体のこと)が関係している」と聞くと驚く人も多いでしょう。しかし、このことは医学雑誌「PLOS ONE」に論文として発表されています。まずはこの内容について簡単に紹介したいと思います。(参考文献:PLoS One

「PLOS ONE」に投稿された論文によると、タバコをやめた人の約80%もの人が平均7~8kg も太るとされています(外国人のデータです)。中には、食べる量を減らしても太る人がいます。このことから、「禁煙による体重増加には食事以外の原因があるのではないか?」と考えられました。

そこで、禁煙前後で食事内容や腸内フローラがどのように変化したか調査されました。概要は以下のとおりです。

  • 調査に協力してくれる20名に集まってもらいました。
  • 20名の内訳は次の通りです。非喫煙者5名、喫煙者5名、禁煙し始めた人10名。
  • 調査期間は9週間とし、9週間のカロリー摂取量、摂取した栄養素、体重の変化、腸内フローラの変化を解析しました。

調査の結果、禁煙し始めた10名は禁煙後8週間で平均 2.2kg 体重が増えました。

禁煙前後の変化


しかも、禁煙前後で摂取カロリーや栄養素にほとんど差はなかったのです。このことから、やはり体重増加の原因は食事以外にあると考えられました。さらに、禁煙前後で腸内フローラが「肥満型」に変化していることも確認されたのです。


2.2.「肥満型」の腸内フローラとは?


「肥満型」の腸内フローラを理解するために、まずは「やせ菌・デブ菌」について確認しておきましょう。

私たちのお腹の中には100兆個以上もの腸内細菌がいます。これらの腸内細菌は大きく4つのグループに分けられます。専門用語になってしまいますが、、バクテロイデス、ファーミキューテス、プロテオバクテリア、アクチノバクテリアという4つのグループです。

※ここからしばらくこの4つのカタカナが出てきます。ご容赦ください。。

このうち、痩せている人にはバクテロイデスが多く、太っている人にはファーミキューテスが多いことから、「バクテロイデス=やせ菌」「ファーミキューテス=デブ菌」と考えられるようになりました。

腸内細菌の「門」レベルでの分類

<参考記事>
太る原因は「腸内細菌」にある!



実際に、「やせ菌:デブ菌」の比が肥満度に関係することもわかってきました。そして、「やせ菌:デブ菌」のバランスを確認することで、「肥満型」か「やせ型」かわかるようになってきたのです。

例えば、やせ菌(バクテロイデス)の占める割合が全体の30%、デブ菌(ファーミキューテス)の占める割合が全体の60%だった場合、デブ菌のほうが多いことから「肥満型」の腸内フローラということになります。逆に、やせ菌のほうが多ければ「やせ型」の腸内フローラということになるのです。


肥満型とやせ型の腸内フローラ


以上のことを踏まえた上で、禁煙によって腸内フローラがどのように変わったか確認してみましょう。


3.禁煙によって腸内フローラは「肥満型」になる!


禁煙をし始めた人たちの腸内フローラは、禁煙前に比べて明らかに変化していました。下図のとおり、デブ菌(ファーミキューテス)が急増し、やせ菌(バクテロイデス)が減っていたのです。


禁煙による腸内フローラの変化
(参考文献:PLoS Oneの画像を一部編集)


なお、多くのインターネットサイトでは、「禁煙でバクテロイデスが増える」と書かれています。最初に報じたニュースサイトが間違えていたため、そのような誤った情報が広がったと思われます。正しくは上図のとおり、「禁煙でファーミキューテス(デブ菌)が増える」です。


4.腸内フローラが「肥満型」になるのを防ぐ方法


ここまで述べてきたように、禁煙によって腸内フローラは「肥満型」に変化するようです。そのため、禁煙後の肥満を防ぐためには、腸内フローラを良好な状態に保ち、肥満型にならないようにすることが大切です。つまり、腸活をする必要があるのです。

その中でも特に大切なのは、動物性脂肪(常温で固体の脂肪)の摂取量を減らすことと、食物繊維やオリゴ糖などをしっかりとることです。

動物性脂肪が腸によい影響を与えることはまずありません。基本的には腸に悪影響しかないですし、動物性脂肪のとりすぎでデブ菌が増えることもわかっています。特に動物性脂肪と糖質のセットは最悪の組み合わせです。なので、なるべくこれらの食品は減らすようにしてください(背脂の入ったラーメンとかNGです、、)。

<参考記事>
脂肪のとりすぎは腸内細菌バランスを「肥満型」にする!



また、食物繊維やオリゴ糖などを摂取することで、ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌を増やすことができます。ビフィズス菌や酪酸菌はダイエットに効果的な成分(酢酸や酪酸)をお腹の中で作ってくれるので、これらの善玉菌はしっかりと増やしておきたいですね。

<参考記事>
短鎖脂肪酸のダイエット効果:善玉菌と食物繊維の相乗効果でやせる!



もちろんダイエットのためには運動も大切です。でも、まずは食事がキホンです。もしあなたがタバコをやめるのであれば、「動物性脂肪と糖質のセットはなるべく減らす」「食物繊維やオリゴ糖を積極的にとる」を意識して、腸内細菌バランスを整えることを心がけてみて下さいね。


5.まとめ

  • タバコをやめると体重が増えてしまう人が多い。
  • タバコをやめると腸内フローラが「肥満型」に変化する。
  • 禁煙による体重増加を防ぐためには、脂肪(特に動物性脂肪)の摂取量を少なくし、食物繊維やオリゴ糖を増やすことが大切である。
今回は禁煙後の体重増加について腸内フローラの観点から述べてきました。「動物性脂肪を減らす」「食物繊維やオリゴ糖を摂取する」というのは腸活ダイエットを成功させる上でとても大切なことなので、ぜひ日々の食事の参考にしてみてください。

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