年をとるほど便秘になる?!その原因・注意点・対策を解説!

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この記事のポイント


一般的に、便秘は女性に多いイメージがあります。女性はダイエットをして食べる量を減らしたり、女性ホルモンの影響があったりするため、男性に比べて便秘になりやすいのです。

しかし、年をとるにつれて男性の便秘が増えてきます。特に、高齢男性の便秘は重くなるケースも多いです。

そこで今回は、年を取るほど便秘が増える理由、高齢者の便秘の注意点、便秘解消法について解説していきます。若い人との違いを理解して、早く便秘を解消するようにしましょう。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。


1.年を取るほど男女ともに便秘が増える


厚生労働省は定期的に「国民生活基礎調査」という調査を行っています。平成28年の調査結果をもとに、便秘に悩む人の割合をグラフにすると以下のようになります。

便秘に悩んでいる人の割合
(平成28年 厚生労働省 国民生活基礎調査のデータよりグラフを作成)


青が男性、オレンジが女性を表しています。50代までは、あきらかに女性の便秘が多いです。しかし、60歳を超えたあたりから男性の便秘が増えていることがわかります。

また、性別に関係なく年齢を重ねるにつれて便秘の人が増えていることも読み取れます。それでは、なぜ年をとると便秘の人が増えるのでしょうか? その理由について解説していきます。


2.年を取るほど便秘になりやすい3つの理由


年を取るほど便秘になりやすい理由は主に3つあります。「腸内環境の悪化」「筋力の低下」「食事量の減少」です。それぞれ順に説明していきます。

■ 腸内環境の悪化
高齢になると腸内環境が悪くなってきます。具体的には、ビフィズス菌などの善玉菌が減って、大腸菌などの悪玉菌が増えるのです。特に50歳を過ぎる頃からその変化は現れてきます。腸内環境の悪化はスムーズな排泄を妨げるため、便秘になりやすくなるのです。

年を取ると腸内環境が悪化する

<参考記事>
年をとるほど腸活を!腸内フローラは加齢とともに変化する



■ 筋力の低下
年を取るとどうしても筋力が低下します。それは腸の筋肉も同じです。腸の収縮運動(食べた物を肛門方向へと移動させる運動)は腸の筋肉が行っています。そのため、腸の筋肉が衰えると収縮運動も弱くなり便秘になってしまうのです。

年を取ると筋力が落ちる


■ 食事量の減少
年を取ると、若い頃に比べて食べる量が減ります。そして、食事の量が減ると腸への刺激が小さくなるため、腸の運動も弱くなってしまいます。これは女性に多い「ダイエットによる便秘」と同じ原理です。

年を取ると食べる量が減る

<参考記事>
食べない系のダイエットは便秘になる?!その理由と対策を解説!


このように、「腸内環境の悪化」「筋力の低下」「食事量の減少」などの要因があるため、年をとるとどうしても便秘になりやすいのです。そして、高齢者の便秘にはいくつか注意すべきことがあります。以下の項目では、その注意点について述べていきます。


3.高齢者の便秘における3つの注意点


高齢者の場合、「トイレでいきみすぎない」「下剤を使いすぎない」「隠れている病気を見過ごさない」という3つの点に注意する必要があります。順に確認していきましょう。


■ 注意点① トイレでいきみすぎない
いきなりですが、「トイレやお風呂で、脳卒中や心臓発作などで倒れる高齢者が多い」ということをご存知でしょうか?

特に冬場のトイレとお風呂は要注意です。暖かい部屋から寒い場所に行くと冷気によって血管が収縮して血圧が上がります。血圧が急に上がると血管への負担が大きくなるため、脳卒中などの血管系の病気につながりやすいのです。

冬場のトイレやお風呂に注意

ここまで読むと、トイレでいきみすぎるのがよくないことも理解できると思います。トイレでいきみすぎると、血圧が上がってしまうのです。普段から血圧が高めの人は、脳卒中や心筋梗塞などのリスクがあることを覚えておきましょう。

また当然ですが、いきみすぎると「痔」になる可能性も高くなるので注意しましょう。


■ 注意点② 下剤を使いすぎない
以前、便秘に悩む60歳代の女性と話したことがあります。彼女は毎日のように市販の下剤を飲んでいました。また、彼女は老人ホームで働いていたのですが、そのような施設では下剤が使われることがよくあるそうです。

しかし、正直なところ、下剤の使い過ぎはよくありません。彼女にもそのように率直に伝えました。特に、センナ、センノシド、ダイオウ、アロエなどが入った下剤には注意が必要です。

結腸刺激性下剤の例


センナ、センノシド、ダイオウ、アロエなどが入った下剤は専門用語で「結腸刺激性下剤」と呼ばれます。結腸刺激性下剤は、「使っていると腸が刺激に慣れてきて、通常の量を飲んでも効かなくなる」「大腸の粘膜に黒いシミができる」などの弊害があるのです。

そのため、薬を使うにしても「結腸刺激性下剤」の常用はなるべく避けましょう。そして、酸化マグネシウムやラクチュロース(オリゴ糖の一種)などが主成分の薬に少し変えていくようにしましょう。

酸化マグネシウムの例


※腎機能が低下している人の場合は、酸化マグネシウムを飲むと副作用のリスクがあります。薬を選ぶ際は医師や薬剤師に相談するようにしてください。


■ 注意点③ 隠れている病気を見過ごさない
高齢者の場合、便秘の背景に何らかの病気が隠れていることがあります。例えば、ポリープやがんが原因で便秘になることもあります。また、糖尿病やパーキンソン病なども便秘を引き起こします。

そのため、「突然便秘になって改善する気配がない」「便に血が混じる」「発熱や嘔吐などの症状がある」などの場合は、医療機関に相談するようにしてください。

便秘を引き起こす病気の例


4.高齢者の便秘解消法


高齢者の便秘対策は、基本的には若者の便秘対策に似ています。ただ、高齢者特有の原因(腸内環境の悪化、筋力の低下、食事量の減少)があるため、それに応じた対策をとったほうがよいでしょう。

それぞれの原因に対する対処法を順に紹介します。


■「腸内環境の悪化」の対処法
腸内環境を改善するために、納豆、ぬか漬け、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的に食べましょう。また、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のエサとなる「オリゴ糖」が豊富な食材も意識して食べましょう。具体的にはタマネギ、ゴボウ、アスパラガスなどの野菜、りんごやバナナなどのフルーツが該当します。

オリゴ糖が豊富な食材(例)


また、必要に応じて乳酸菌サプリメントやオリゴ糖サプリメントなども利用するとよいでしょう。


■「筋力の低下」の対処法
適度な運動を生活の中に取り入れましょう。特に激しい運動をする必要はありません。ウォーキングや軽い体操を習慣的に実施するとよいでしょう。また、腹筋運動のような下腹部に負荷のかかる運動も効果的です。

ちなみに私は「1分間スクワット」をよくやっています。ゆっくりで構わないので1分間だけスクワットをする、という方法です。慣れてきたら時間を延ばすのではなくスクワットのスピードを上げていきます(負荷は時間ではなくスピードでコントロールする)。この方法は「たった1分間だけ頑張る」という意識が働くため、運動に対する心理的ハードルが下がるのでおススメです。


■「食事量の減少」の対処法
若いころに比べて食べる量が減ったからといって、無理にたくさん食べる必要はありません。大事なのは、少量でも便秘になりにくい栄養素、つまり食物繊維を意識してとることです。

食物繊維というと、野菜やきのこなどをイメージすると思います。ただ、それだけでなく海藻や納豆、ネバネバ野菜(長芋やオクラなど)、麦ごはんなども普段の献立に加えましょう。そうすることで、う〇ちを柔らかくしてくれる食物繊維(水溶性食物繊維といいます)を確保することができるのです。

水溶性食物繊維が多い食材(例)


5.まとめ

  • 性別に関係なく、年をとると便秘になる増えてくる。
  • 年をとると便秘になる理由として、「腸内環境の悪化」「筋力の低下」「食事量の減少」などがある。
  • 特に高齢者の場合、「トイレでいきみすぎない」「下剤を使いすぎない」「隠れている病気を見過ごさない」の3つの点に注意したほうがよい。

今回は加齢に伴う便秘について解説してきました。高齢者の便秘にはさまざまな特徴があるため、若者とは違った視点が必要になります。特に、高齢男性の便秘は重くなるケースがあるので、ぜひ今回の内容を便秘対策に役立ててみてください。



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