昔に比べて現代の医療技術は大きく進歩しています。2000年代初期と比較しても、がんの5年生存率は確実に延びています。また、たとえエイズウィルスに感染したとしても、エイズが発症するのを抑え続けることができるようになってきました。
このように医療は大きく進歩しています。とはいえ、「病気になってもよい」というわけではありません。当然ですが、病気は「治療」よりも「予防」のほうが大切です。
そこで今回は「病気の予防」という観点から、腸内環境を整えることの重要性を述べていきます。病気を予防して、健康に過ごすためにもぜひ参考にしてみてください。
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- 腸内環境の基本(part1)
- 予防医療のポイント:遺伝子は変えられないが腸内環境は変えられる!
1.遺伝子疾患の予防は簡単ではない
遺伝子の異常が原因で発症する病気があります。例えば、ダウン症や色覚異常などは先天的な遺伝子異常によるものです。また病気ではありませんが、お酒に強い or 弱いというのも遺伝子によって決まります。
ご存じかもしれませんが、遺伝子の異常はがんにも関係しています。例えば、乳がんや卵巣がんの原因遺伝子の一つにBRCA1という遺伝子があります。この遺伝子に変異があると、通常よりも高い確率で乳がんや卵巣がんになります。
なぜ、BRCA1のことを持ち出したかというと、これは米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんのエピソードに直結するからです。
2013年、彼女は「がんを予防するため」に両方の乳房を切除しました。当時、彼女は乳がんと診断されたわけではありません。あくまで「予防」のためです。
健康だった彼女がそのような決断をした理由は、このBRCA1遺伝子に変異が見つかったからです。そして医師から、「生涯で乳がんを発症する確率が87%」と診断されたからです。また「母親が56歳の時に乳がんで亡くなった」という事実もありました。
このような状況が重なって、彼女は「癌を予防するために」両乳房を切除するという決断をしたのです。さらに2015年には卵巣も摘出しています。いずれも大変重い決断であったことは想像に難くありません。
この例からもわかる通り、遺伝子が原因の疾患を予防するのは簡単なことではありません。いくら医療が進歩したからといって、遺伝子の異常を正常に戻すことはできないのです。
2.腸内環境の改善は難しくない
私も常々話していますが、腸内環境が悪くなるとさまざまな病気になり得ることがわかっています。
例えば、大腸がんの原因に腸内細菌が関わっています(腸の病気なので、これは想像しやすいですよね)。それだけではありません。肥満や糖尿病、動脈硬化、慢性腎不全、肝炎など、腸内細菌は腸から離れた臓器にも影響を及ぼし、さまざまな病気に関わっているのです。
このように、腸内環境が悪くなるとさまざまな病気を引き起こしかねません。しかし、遺伝子疾患と大きく異なるのは、「腸内環境は変えられる」ということです。
腸内環境は遺伝子とは違って変えることができます。ちょっとした食生活の変化だけでは変わりませんが、しっかりと食生活やライフスタイルを整えることで、着実に腸内環境はよくなっていくのです。
3.生活習慣によって腸内環境は変わる
一卵性双生児という双子をご存じでしょうか? 遺伝子が完全に同じ双子のことです。
実は、遺伝子がまったく同じ一卵性双生児であっても、腸内細菌のバランスは異なります。この理由は、「腸内環境は生活習慣の影響を受けるから」です。実際、このことは科学的にも実証されています(2014年に超一流の科学誌「Cell」で公表されています)。
このことからも、「腸内環境は変えられる」ということがわかると思います。
ただ、ちょっと食生活を変えたからといってすぐに変わるわけではありません。例えば、「1日に納豆2パック」を一週間続けたとしても腸内細菌のバランスはほぼ変化しません(2016年 腸内細菌学会という学会での報告)。
一方、普通の食事をしていた人が「肉や卵などの動物性食品だけ」の食事に変えると、2~5日間で腸内細菌バランスは悪い方向に変化します。かなり極端な食事の変化ですが、短期間で腸内環境が変化することが示されています。(2014年、超一流の科学誌「Nature」での報告)
<参考記事>
食生活を2週間変えれば腸内環境はよくなっていく!
上述のとおり、「納豆を増やしただけ」ではあまり大きな変化が期待できないかもしれません。ただ、長期的に日々の食生活やライフスタイルを整えることで着実に腸内環境はよくなっていきます。
4.まとめ
- 遺伝子を変えることはできない。そのため、遺伝子疾患を予防するのは簡単ではない。
- 腸内環境は変えられる。そのため、腸内環境が原因とされている病気は予防することができる。
- 食習慣やライフスタイルを整えて、腸内環境を健全に保つことが何よりたいせつである。