食生活を2週間変えれば腸内環境はよくなっていく!

この記事のポイント


腸内環境は食事や運動、睡眠などの影響を受けて変化します。その中でも、特に食事の影響が大きいため、よい腸内環境を維持するためには日頃から腸によい食事を心がける必要があります。

では、腸に悪い食事をしたらすぐに腸内環境は悪化するのでしょうか? 逆に、腸内環境をよくするにはどれぐらいの期間が必要なのでしょうか?

今回は学術論文を参考にしながらこれらの疑問に答えていきたいと思います。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。


1.腸内環境は悪くなりやすくよくなりにくい


食事と腸内環境の変化に関して、2014年にとても興味深い論文が発表されました。それは「動物性食品(肉、卵など)や植物性食品(穀物、野菜、果物など)が腸内環境にどのような影響を与えるか?」を調べたものでした。

その内容を簡単に紹介します。(参考文献:Nature

・研究対象

18名の健康なアメリカ人。この18名を9名ずつ2つのグループ(グループAとグループB)に分けました。

・準備期間

最初の4日間を準備期間とし、その間は全員に普通の食事をとってもらいました。また、毎日う〇ちを採取しました。

・試験期間

準備期間のあと、5日間を試験期間としました。この期間、グループAの9名には「動物性食品のみ」を、グループBの9名には「植物性食品のみ」を食べてもらいました。また、毎日う〇ちを採取しました。

・準備期間と試験期間のう〇ちを解析して、腸内フローラを比較しました。

実験の全体像


1-1.肉だけを食べていると1~5日で悪玉菌が増える

まずはグループAの腸内環境を見ていきましょう。

肉や卵などの動物性食品のみを食べたグループAでは腸内環境が大きく変化し、準備期間に比べて明らかに悪くなっていました。

特に、ビロフィラという悪玉菌は10倍近く増加していました。この菌は大腸がんや炎症性腸疾患という病気に関わる悪玉菌です。その他にも、一般的には悪玉菌と考えられているクロストリジウムという菌や大腸菌が約5倍に増えていました。一方、ローズブリアやブラウティアという善玉菌は約1/8に減っていました。

あまり馴染みのない名前の菌ばかりだと思いますが、要は「悪玉菌が増えて善玉菌が減った」と理解してください。このほかにもさまざまな菌が増減していましたが、腸内細菌全体のバランスで考えると腸内環境は悪化していたと言えます。

このように、動物性食品(肉、卵など)のみを1~5日間食べ続けると腸内環境はすぐに悪くようです。


1-2.野菜・果物だけを食べていてもすぐに腸内環境はよくならない

次にグループBの腸内環境を確認しましょう。

試験期間に穀類、野菜、果物などの植物性食品のみを食べたグループBでは、驚いたことにグループAほどの変化はありませんでした。

ビロフィラやクロストリジウムなどの悪玉菌は約1/3に減っていたり、腸の中の短鎖脂肪酸(腸によい物質)が増えていたりするので、なんとなく腸内環境は改善傾向にありました。しかしグループAと比べると、腸内細菌全体のバランスはそれほど変わっていませんでした。これは大変興味深い結果でした。

これらの結果をすごく端的にまとめると「腸内環境は悪くなりやすくよくなりにくい」ということになります。


腸内環境は悪くなりやすくよくなりにくい


それでは、腸内環境を改善するためにはいったい何日かかるのでしょうか? ここからは別の論文を参考にしながらその答えを紐解いていきます。(参考文献:Nat Comm


2.食生活を大きく変えると2週間で腸内環境はよくなる


・研究対象

・グループA:南アフリカ在住のアフリカ人20名
・グループB:アメリカ在住のアフリカ系アメリカ人20名

・準備期間

最初の2週間を準備期間とし、いつも通りの食事をしてもらいました。つまり、グループAは低脂肪・高食物繊維の食事(アフリカ食)、グループBは高脂肪・低食物繊維の食事(アメリカ食)です。

・試験期間

準備期間のあと、グループAとグループBの食事を入れ替えました。つまりグループAはアメリカ食を食べ、グループBはアフリカ食を食べました。これを2週間続けました。

・準備期間と試験期間のう〇ちを解析して、腸内環境の変化を調べました。

実験の全体像


グループBのアメリカ人はグループAのアフリカ人に比べて腸内環境が悪かったのですが、アフリカ食を2週間食べ続けることで腸内環境は明らかによくなりました。

具体的には下記のような変化がありました。
  • 善玉菌の一種である「酪酸菌」が約10倍に増加
  • 悪玉菌であるビロフィラが1/3~1/10に減少
  • 肥満に関わる菌(Doreaという菌)が約1/3に減少
  • 腸の発癌リスク(=腸の炎症)が低下
  • 短鎖脂肪酸が約2.5倍に増加

食生活を2週間改善すれば腸内環境はよくなる


腸内細菌のバランスが変化しただけでなく、発癌リスクの指標となる腸の炎症が軽減していることからも明らかに腸内環境がよくなっていると言えます。

このように、普段は高脂肪・低食物繊維のアメリカ食を食べていたグループBの人であっても、2週間食生活を大きく変えることで腸内環境はよくなります。このことからも、まずは「2週間」を目安に食生活を見直すことを意識してみましょう。(腸内環境は悪くなりやすいので、その後は継続することも大切です)


3.まとめ

  • 腸内環境は悪くなりやすくよくなりにくい。
  • 肉、卵などの動物性食品だけを食べ続けていたら5日以内に腸内環境は悪くなる。
  • 野菜、果物などの植物性食品だけを5日間食べ続けても腸内環境はそれほどよくならない。
  • 腸によい食事を2週間継続したら腸内環境はよくなる。
今回は「腸内環境が変化する期間」に着目して解説してきました。「腸内環境は悪くなりやすくよくなりにくい」ということは別の論文でも示唆されています。このこからも腸活は「継続」が大切であることが理解できると思います。あなたも腸によい食事を習慣化して、健全な腸内環境を維持していきましょう。



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