ぬか漬けは植物性乳酸菌の宝庫!ヨーグルトとの違いを詳しく解説!

この記事のポイント


日本の伝統的な発酵食品の一つに「ぬか漬け」があります。味や風味だけでなく、栄養面でも優れていることから、普段の食事でぬか漬けを食べている人も多いでしょう。

また、ぬか漬けには数多くの乳酸菌が含まれているので、「腸活」の観点からも優れた食材と言えます。そこで今回は、ぬか漬けに含まれる乳酸菌について解説していきます。日本の伝統的発酵食品の素晴らしさに改めて気付くことができると思います。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。


1.ぬか漬けとは


玄米を精米するときにできる外皮や胚芽などの捨てる部分のことを「米ぬか」といいます。この米ぬかに塩や水、野菜などを漬け込んで発酵させることで「ぬか床」ができあがります(※ このときの野菜は「捨て漬け」といいます。食べずに捨てられるので、キャベツの芯や大根の頭の部分などが使われます)。

できあがったぬか床に、好みの野菜を数時間~数日間漬け込むことで「ぬか漬け」が完成します。


ぬか床の写真


ぬか漬けは日本の伝統的な発酵食品です。私の実家でもよく母親や祖母がぬか床をかき回していたのを覚えています。最近は無印良品などがとても簡便なぬか床セットを販売しており、その影響もあってか、都会のマンションの一室でぬか漬けを作る人も増えているようです。

我が家でもぬか漬けを作っていますし、スーパーで買ってきたぬか漬けと食べ比べすることもあります。おいしいだけでなく腸活食材としても優秀なぬか漬け。ここからは腸活食材としてのぬか漬けについてもう少し詳しく見ていきましょう。

ぬか漬けの写真


2.ぬか漬けに含まれる善玉菌の種類と数


2-1.ぬか漬けに含まれる善玉菌の特徴

ぬか漬けに含まれる主な菌は「乳酸菌」です。また、数は多くないですが、「酵母」や「酪酸菌」もいます。これらはいずれも体にとってよい働きをしてくれる善玉菌です。


ぬか漬けに含まれる善玉菌


<参考記事>
乳酸菌と酪酸菌の特徴:善玉菌はバランスが大事!


ご存知の方もいるかもしれませんが、ぬか床の状態というのは時期や家庭によって異なります。漬け込む野菜やかき混ぜる人の手に付着している菌の影響を受けるためです。そのため、厳密には各家庭ごとにぬか床の特徴は異なります。ただ、九州大学や西南女学院大学がまとめた研究内容を参考にすると、一般的なぬか床やぬか漬けには以下のような特徴があるようです。

  • ぬか床には12~30種類の善玉菌がいる。
  • 熟成期間の長いぬか床ほど、たくさんの善玉菌がいる。
  • ナスのぬか漬け100グラムには乳酸菌が約300万~4億個含まれている。
  • きゅうりよりもナスのほうが乳酸菌は多い。
(参考文献:生物工学, 2011, Vol.89, p.482西南女学院大学紀要, 2017, Vol.21, p.145


ヨーグルトだと2種類の乳酸菌しか摂取できないこともあるので、ぬか漬けに12~30種類もの善玉菌が含まれているのは嬉しいですね。

一方、乳酸菌の数が「300万~4億個」というのは決して多くはありません。ヨーグルトの場合は、100グラム食べると約10億~100億個の乳酸菌を摂取できるので、乳酸菌の数だけで比較すると、ぬか漬けよりもヨーグルトのほうが多いです。


乳酸菌の数の比較


また、ぬか漬けに含まれる乳酸菌は「植物性乳酸菌」、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は「動物性乳酸菌」と呼ばれています。この違いについて簡単に解説しておきます。


2-2.植物性乳酸菌と動物性乳酸菌

世の中には何百種類もの乳酸菌がいますが、大きく分けると「植物性乳酸菌」と「動物性乳酸菌」の2つに分けられます。それぞれ以下のような特徴があります。


植物性乳酸菌・野菜、米、大豆などの植物から見つかった乳酸菌
・野菜などの植物を発酵する力が強い
・漬け物や味噌、しょう油などを作るのに必要
動物性乳酸菌・動物の消化管などから見つかった乳酸菌
・動物の乳を発酵する力が強い
・ヨーグルトやチーズを作るのに必要


植物性乳酸菌や動物性乳酸菌というのは、その乳酸菌が「どこから見つかったか」によって決まります。これは学術的には正しい分類の仕方ではないですし、どちらの乳酸菌のほうが優れている(or 劣っている)と評価できるものでもありません

ただ、一般的には「植物性乳酸菌のほうが生きたまま腸に届きやすい」「植物性乳酸菌のほうが健康によい」と言われることが多いです。しかし今のところ、「植物性乳酸菌のほうが優れている」ということを示す研究データはありません。”植物”や"動物"という言葉から連想されるイメージだけが世の中に広まっているように私自身は感じています。

いずれにしろ、分離源(どこから見つかったか)に関わらず、乳酸菌はおなかの中でよい働きをしてくれます。その乳酸菌を10種類以上も確保できることからも、ぬか漬けはとても魅力的な発酵食品と言えるでしょう。


3.塩分のとりすぎに注意


最後に、ぬか漬けを食べるときの注意点を一つだけ述べておきます。

ぬか漬けは漬け物なので塩分が多いです。そのため、体によいからと言って食べ過ぎは禁物です。どんな食材にも言えることですが、いろいろな物をバランスよく食べることを心がけましょう。

※ ヨーグルトも食べすぎると糖分や脂肪のとりすぎになります。ヨーグルトの場合は「無糖・無脂肪」の商品が売られているので、たくさん食べたいときは「無糖・無脂肪」を選ぶようにしましょう。



4.まとめ

  • ぬか漬けには「乳酸菌」「酵母」「酪酸菌」などのさまざまな種類の善玉菌が含まれている。
  • ぬか漬けに含まれる乳酸菌の種類はヨーグルトよりも多い。しかし、乳酸菌の数はヨーグルトよりも少ない。
  • ぬか漬けなどに含まれる植物性乳酸菌は、ヨーグルトなどに含まれる動物性乳酸菌に比べて健康によいというイメージがある。しかし実際のところ、その優劣を評価するのは難しい。

今回はぬか漬けに含まれる善玉菌についてヨーグルトと比較しながら解説してきました。ぬか漬けもヨーグルトも体によい発酵食品であることに違いはありません(乳製品が合わない人もいますが、、)。腸活を進めていくうえでこれらの発酵食品はとても大切です。自分にあった発酵食品を日々の生活に取り入れて、良好な腸内環境を維持していきましょう。



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