ファスティング(断食)は「デトックス効果がある」と宣伝されることがありますよね。つまり、「断食することによって体内の毒素が排出される」と謳われているのです。
ただ、私は「なんでもかんでもデトックス(毒素の排出)されるわけではない」と考えています。
今回はその一例として、「ファスティングによって体内の毒素が増えた」という研究結果を紹介します。また、その改善策についても解説します。一般的な宣伝文句を鵜呑みにせず、科学的根拠にもとづいて考えることはとても大切です。
目次
1.ファスティングによって腸管内と血液中の毒素(p-クレゾール)が増える
今回はp-クレゾールという毒素について述べていきます。なんだか難しい名前ですが、要は「腸内細菌によって作られる毒素」と考えてください。p-クレゾールの詳しい説明を記しておきますが、下記は読み飛ばしても構いません。
<p-クレゾールの詳しい説明>
体内に取り込まれたタンパク質はアミノ酸に分解されます。アミノ酸の中には「チロシン」というアミノ酸があり、ある種の腸内細菌(悪玉菌)がチロシンを原料にして「p-クレゾール」という毒素を作っています。
腸管内で作られたp-クレゾールは体内に吸収されるため、血液中のp-クレゾールも増えてしまいます。また、体内に吸収されたp-クレゾールの一部は肝臓でp-クレジル硫酸と呼ばれる別の毒素に変換されます。
つまり、腸管内でp-クレゾールが作られると、血液中のp-クレゾールやp-クレジル硫酸が増えるのです。これらの毒素は体内で活性酸素を増やすため、腎臓や血管に悪影響を及ぼすことになります。
体内に取り込まれたタンパク質はアミノ酸に分解されます。アミノ酸の中には「チロシン」というアミノ酸があり、ある種の腸内細菌(悪玉菌)がチロシンを原料にして「p-クレゾール」という毒素を作っています。
腸管内で作られたp-クレゾールは体内に吸収されるため、血液中のp-クレゾールも増えてしまいます。また、体内に吸収されたp-クレゾールの一部は肝臓でp-クレジル硫酸と呼ばれる別の毒素に変換されます。
つまり、腸管内でp-クレゾールが作られると、血液中のp-クレゾールやp-クレジル硫酸が増えるのです。これらの毒素は体内で活性酸素を増やすため、腎臓や血管に悪影響を及ぼすことになります。
そして、「断食によって腸管内や血液中のp-クレゾールが増える」ということが、ヤクルト中央研究所の研究によって示されています(参考文献:Exp. Anim. 2007, Vol.56, p,301)
この論文の内容を図にまとめると下記のようになります。ラット(≒ねずみ)が12時間もしくは18時間断食すると、腸と血液中のp-クレゾールが増えるのです。
一般的には「ファスティング=デトックス(毒素の排出)」と考えられています。ところが、この実験結果が示すように、体内の毒素が増えることもあるのです。
それでは、なぜファスティングによって毒素(p-クレゾール)が増えたのでしょうか? また、毒素を増やさないためにはどうすればよいのでしょうか? そのヒントを紐解いていきましょう。
2.ファスティングによって腸管内のタンパク質濃度が増える
ファスティングによって体内のp-クレゾールが増えた原因を考える前に、以下のケース1とケース2を確認してください。- ケース1:水100mLに塩2グラムを溶かす
- ケース2:水10mLに塩1グラムを溶かす
ここで質問です。ケース1とケース2ではどちらのほうがしょっぱいでしょうか?
塩の量はケース1のほうが多いです。ただし、ケース1は水の量も多いので、塩分濃度は薄いです。一方、ケース2は塩の量が少ないものの、水の量も少ないので、塩分濃度は濃いです。つまり、ケース1よりもケース2のほうがしょっぱいのです。
実は、ファスティングをすることによって腸の中で同じことが起きています。
ファスティングをすると食べる量が激減します。そのため、腸管内の内容物は減ります。ところが、腸壁から剥がれ落ちる細胞(腸管内の細胞は常に入れ替わっているので、細胞が剥がれ落ちています)は減らないため、腸管内には一定のタンパク質が存在することになります。
つまり、腸の内容物は減るものの一定量のタンパク質が存在するため、ケース2のように腸管内のタンパク質濃度は増えているのです。
腸内細菌(悪玉菌)にしてみれば、自分のまわりにp-クレゾールの原料がたくさんある状態になります。そのため、ファスティング前に比べるとファスティング中のほうが効率よくp-クレゾールを作れてしまうのです。
このように、ファスティング中に腸管内のタンパク質濃度が上がるため、p-クレゾールがたくさん作られるようになると考えられています。
3.食物繊維を摂取することでp-クレゾールの増加を抑えられる可能性がある
最後にp-クレゾールの増加を防ぐ方法について解説します。ヤクルト中央研究所が発表した論文には、「腸管内の内容物を増やすことがp-クレゾールの産生抑制につながる」と述べられています。
特に、水溶性食物繊維(水に溶ける食物繊維)であれば、水分を含んでドロドロの状態で腸管内を通過するため、腸管内のタンパク質濃度を効果的に下げることができるでしょう。そのため、p-クレゾールの増加を防ぐには水溶性食物繊維の摂取が有効と考えられます。
ただ、ファスティング中は水溶性食物繊維の摂取も制限されます。そのため、ファスティング後は意識的に水溶性食物繊維を摂るようにするとよいでしょう。
<水溶性食物繊維を多く含む食材>
- ヤマイモ、オクラなどのネバネバ系の野菜
- 昆布やわかめなどの海藻類
- ごぼうや菊芋
- 押し麦やもち麦
4.まとめ
- ファスティングによって体内の毒素(p-クレゾール)が増えることがヤクルト中央研究所の研究で示されている。
- その主な原因は「食物繊維の摂取不足」と考えられる。
- そのため、ファスティング後は意識的に食物繊維(特に水溶性食物繊維)を摂取するとよい。
今回は「ファスティングによって何でもデトックスできるわけではない」という観点で解説してきました。
健康法としてのファスティングは科学的にも実証されつつありますが、「良いことばかりではない」ということも理解しておきましょう。ただ、ファスティング後の食事(回復食)を意識することで、悪い影響を回避することも可能です。