魚の油(DHAやEPA)はメタボ予防効果のある腸内細菌を増やす

私たちが普段摂取する油にはさまざまな種類があります。しかし食事と健康について興味を持っている人でなければ、油の種類を気にすることはあまりないでしょう。

ただ、このページを読んでいる人には油の種類について是非意識してほしいと思っています。なぜなら、摂取する油の種類によって腸内環境が変化するからです。さらにその変化が、メタボリックシンドローム(生活習慣病)の発症や予防に影響するからです。

そこで今回は、「脂肪の種類、腸内フローラ、メタボリックシンドロームの関係」について述べていきます。腸内フローラを整えてメタボを予防するためにも、摂取する油に注意するようにしましょう。

脂肪の種類とメタボリックシンドロームとの関係

油は大きく分けると飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分けることができます。以下、簡単に説明していきます。

飽和脂肪酸
常温で固体の油です。ラードやバターなどが該当します。これらは動物性脂肪と呼ばれることもあります。

簡単にいってしまうと、飽和脂肪酸は体に悪いです。詳細は後述しますが、特にメタボリックシンドロームに繋がる可能性が高いため、普段の食事ではなるべく飽和脂肪酸を避けたほうが良いです。

不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は常温で液体の油です。オリーブオイル、サラダ油、亜麻仁油(アマニ油)などの植物性脂肪が該当します。また、今回紹介するDHAEPAなどの魚の脂肪も不飽和脂肪酸に該当します。

※ DHAは「ドコサヘキサ塩酸」、EPAは「エイコサペンタ塩酸」の略です

不飽和脂肪酸の中には体に良いものと悪いものがあります。そのため、飽和脂肪酸のように単純に「体に良い or 悪い」とは言い切れません。ただ、DHAやEPAは基本的には体に良い成分です。

DHAやEPAはイワシやサバなどの青魚に豊富に含まれる脂肪です。花粉症やアトピーなどのアレルギーの改善、中性脂肪の低下、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の低下などの作用があります。

実際、私の知り合いの薬剤師は「中性脂肪が高い人にはDHAやEPAの摂取を勧めている」と話していました。

このように、飽和脂肪酸は体に悪い影響を与え、DHAやEPAは健康に良い働きをします。そしてこれらの作用は腸内フローラの解析からも裏付けられています。

それでは、これらの油が腸内環境にどのような影響を与えるのかについて以下に解説していきます。

動物性脂肪と魚の脂肪が腸内フローラに与える影響

油の種類と腸内フローラの関係を調べた興味深い論文が2015年に一流科学雑誌「Cell Metabolism」に掲載されました。その内容を簡単に紹介します。

<実験の内容>
  • マウスをグループ①とグループ②の二つに分けました。
  • グループ①のマウス:ラードが豊富に含まれる餌を11週間与えました。
  • グループ②のマウス:DNAとEPAが豊富に含まれる餌を11週間与えました。

11週間後、グループ①のマウスとグループ②のマウスを比較しました。すると、ラードが豊富に含まれる餌を食べたグループ①では、体重の増加や血糖値の上昇が確認されました。つまり、グループ①はメタボリックシンドロームに似た症状があらわれたのです。

さらに興味深いのが、腸内フローラの変化です。グループ①では腸の炎症や肥満に関与する「ビロフィラ(Bilophila)」と呼ばれる細菌が増加していました。一方、グループ②では、メタボリックシンドロームの予防効果がある「アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)」と呼ばれる細菌が増加していました。

どちらも聞き覚えのない細菌だと思いますが、要は、「ラードを食べるとメタボに繋がる腸内細菌が増える。一方、EPAやDHAを食べるとメタボ予防に繋がる腸内細菌が増える」ということです。このように、それぞれの油の作用が腸内フローラの変化からも裏付けされたのです。

この実験結果から、摂取する油の種類を意識するだけでもメタボになるかメタボを予防できるか変わってくることがわかります。

EPAやDHAの効果的な摂り方

最後にEPAやDHAなどを効果的に摂取する方法を述べていきます。

上述の通り、EPAやDHAはイワシやサバなどの青魚に豊富に含まれる油です。この油を最も効率よく摂取する方法は「お刺身として生で食べる」ことです。

EPAやDHAは熱に強いので、加熱しても分解されることはありません。ただ、焼き魚などにしてしまうと、どうしても魚から油が出ていくので、摂取量は減ってしまいます。加熱して調理する場合は、ホイル焼きや蒸し焼きなどが良いでしょう。

またEPAやDHAは酸化しやすいので、できるだけ新鮮な魚を食べるようにしましょう。さらに体内での酸化を防ぐために、βカロテンが豊富に含まれる緑黄色野菜や、ビタミンEが豊富なゴマなどと一緒に食べるとより効果的です。

ここまで述べてきたように、摂取する油の種類によって腸内フローラは変化します。飽和脂肪酸はメタボに関係する腸内細菌を増やし、EPAやDHAはメタボ予防に関係する腸内細菌を増やすのです。今回、EPAやDHAの効果的な摂取方法も紹介していますので、メタボが気になる方はこれを参考にして普段の食事を見直してみましょう。



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