例えば、ビフィズス菌BB536(Bifidobacterium longum BB536)は花粉症の症状を軽減します。またLGG乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus GG)は、アトピー性皮膚炎の発症予防効果があると報告されています。
さらに、乳酸菌L-92(Lactobacillus acidophilus L-92)には、アトピー性皮膚炎や花粉症などのさまざまなアレルギー症状を抑える効果があります。この他にも、善玉菌によるアレルギー予防効果が、各乳製品メーカーから報告されています。
ただ、中には効果が弱かったりアレルギーに悪影響を与えたりする場合もあるので注意が必要です。特にアトピー性皮膚炎に悩む人がサプリメントなどで善玉菌を摂取する場合、その菌の種類をよく把握しておく必要があります。
なぜなら善玉菌の中には、アトピーの症状緩和に重要な「ビオチン」という物質を消費するものもいるからです。
そこで今回は、ビオチンの生産・消費という観点から、アトピー性皮膚炎と善玉菌との関係について述べていきます。これを学ぶことで、アトピー性皮膚炎に有効なサプリメントやヨーグルトを選ぶポイントを理解できるようになります。ぜひ参考にしてみてください。
ビオチンとアトピー性皮膚炎の関係
ビオチンは、水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB7とも呼ばれます。生体内では、さまざまな酵素の働きを助ける作用があります。そして、このような作用をする物質を「補酵素」といいます。
ビオチンは、補酵素として働くことによって、体の中で「エイコサペンタエン酸」という脂質の量を増やします。
※ エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)は「EPA」と略されることが多いので、ここでもそのように略します
EPAに関しては、たまにテレビなどで紹介されることがあるため、ご存知の方もいるかもしれません。EPAは、イワシやサバなどの青魚に豊富に含まれる良質の油です。
詳細なメカニズムは割愛しますが、生体内で炎症(アレルギー症状の原因となる体内の免疫反応)を抑える働きがあります。
つまりビオチンには、「体内のEPAを増やす → 炎症を抑える → アトピーの症状改善」という流れでアトピーを抑える効果があるのです。実際に「アトピーの症状改善」を謳ったさまざまなビオチンサプリメントも市販されています。
ビオチンの生産・消費に関わる善玉菌
ビオチンはレバー、豆類、酵母、卵黄、魚などに多く含まれています。また、腸内細菌の中には、ビオチンを生産するものも存在します。ただ、すべての腸内細菌がビオチンを作るというわけではありません。中には、ビオチンを作らずに消費するだけの腸内細菌もいます。
そして、一般的に善玉菌と考えられている乳酸菌やビフィズス菌の中にも、ビオチンを消費するタイプの細菌がいます。
以下に「ビオチン生産性」を指標にして善玉菌を分類します。
ビオチンを生産する善玉菌
- ビフィズス菌BB536(Bifidobacterium longum BB536)
- クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum):酪酸菌の一種です。宮入菌という名前でサプリメントとして売られています。
- アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus):乳酸菌の一種です。
ビオチンを消費する善玉菌
- フェカリス菌(Enterococcus faecalis):乳酸菌の一種です。腸球菌とも呼ばれます。
- ラクトバチルス・ムリナス(Lactobacillus murinus):乳酸菌の一種です。
- ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum):乳酸菌の一種です。
- ビフィズス菌JBL01(Bifidobacterium longum JBL01)
このように、一般的に善玉菌と考えられている乳酸菌やビフィズス菌であっても、種類によってビオチンの生産性は異なるのです。
アトピー性皮膚炎で悩まれている方の場合、腸内環境を整えるために善玉菌のサプリメントなどを摂取することがあります。そのときは、ここに記載した内容を参考にして、ビオチンを生産する善玉菌を選ぶようにしましょう。