幼少期における抗生物質の服用はアレルギーの原因になり得る

抗生物質とは、さまざまな細菌を殺す物質のことです。風邪を引いたときや手術の後など、体の免疫力が低下しているときに処方されます。

ただ、抗生物質は体に悪影響を及ぼすこともあります。なぜなら、抗生物質は私たちの体に住み着いている体に良い細菌も殺してしまうからです。その中には当然、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌も含まれます。<

そして抗生物質のそのような作用が原因で、将来アレルギー疾患になる可能性が高くなることがわかってきました。

そこで今回は抗生物質とアレルギー疾患との関係について解説していきます。小さな子供のいるお母さんや将来子供を生む可能性のある女性には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

アレルギー疾患におけるTh1細胞とTh2細胞の関係

今回の内容を理解するために、簡単にアレルギー疾患が発症するメカニズムについて述べておきます。

アレルギーとは、「体の免疫細胞のバランスが崩れ、花粉やダニ、埃などに対して過剰な免疫反応が起こること」です。アレルギー疾患を予防するためには、この「免疫細胞のバランス」を整えておくことが重要になります。

免疫細胞の中にはヘルパーT細胞というとても重要な細胞があります。そしてこのヘルパーT細胞は、体の中に異物(細菌、ウィルス、花粉など)が入ってくるとTh1細胞Th2細胞という免疫細胞に変化するという性質があります。

一般的に、細菌やウィルスが体内に侵入するとTh1細胞になり、花粉や埃などが侵入した場合はTh2細胞になるといわれています。そして、このTh1細胞とTh2細胞はバランスが非常に重要です。なぜなら、Th2細胞が多くなりすぎるとアレルギー疾患にかかりやすくなるからです。

そして重要なポイントとして、「新生児期は誰もがTh2細胞が多い状態にある」ということがあります。言い換えると、「赤ちゃんはアレルギーにかかりやすい」ということです。

これは、「乳幼児は卵や小麦粉などが原因で食物アレルギーが発症しやすい」という実例からも理解できると思います。

ただ、普通は成長するに連れてTh1細胞が増加し、Th1細胞とTh2細胞のバランスが整っていきます。そしてTh1細胞を増やす要因となるのが、上述の通り「体内に侵入した細菌やウィルス」なのです。

ここまでをまとめると、「①新生時期はTh2細胞が優位 → ②成長の過程で体内に細菌やウィルスが侵入 → ③Th1細胞が増える → ④Th1細胞とTh2細胞のバランスが整う」という流れで、正常な免疫バランスになると考えられています。

幼少期の抗生物質は免疫細胞のバランスを崩す

上述の通り、抗生物質はさまざまな細菌を殺す物質です。私たちのお腹の中にいる腸内細菌もその影響を受けます。

※ 小腸から血液中へすぐ吸収される抗生物質の場合は、腸内細菌への影響は小さくなります。

抗生物質を服用すると体内にいる細菌が死んでしまうため、上記の「③Th1細胞が増える」の部分が不十分になります。そのため、Th2細胞が優位になりアレルギー発症に繋がるのです。

このことはマウスを用いた動物実験で証明されています。その実験の概要は以下の通りです。

  • 赤ちゃんマウスに抗生物質を投与するとTh1細胞が増えず、Th2細胞が多い状態が続きました。
  • この「Th1細胞<Th2細胞」の状態は、成長後も継続していました。
  • 健康な大人マウスに抗生物質を飲ませました。この場合は、Th1細胞とTh2細胞のバランスに変化はありませんでした。

この実験結果から、幼少期であるほど抗生物質の影響を受けやすいことがわかります。実際、人の場合でも、1歳までに抗生物質を服用すると、小学校低学年のときに喘息にかかりやすくなるということが統計解析から分かっています。

このように、幼少期における抗生物質の服用は将来アレルギー疾患にかかる確率を高めます。それでは、抗生物質を処方された場合はどのようにすればよいのでしょうか?

抗生物質を飲むときの注意点

風邪を引いたり手術をしたりして免疫力が低下しているときは、感染症を予防するために抗生物質が処方されることがあります。このとき大人であれば、アレルギー疾患への影響はあまり心配する必要はありません。

一方で子供の場合はどうでしょうか? 将来のアレルギー疾患のことを気にするあまり、感染症にかかってしまっては本末転倒です。

そこで重要なのは、抗生物質を飲んだ後です。服用により、腸内細菌が死んでしまうのは避けられません。ただ、その後しっかりと腸内環境を整えることが大切です。

特に特定のビフィズス菌や乳酸菌にはTh1細胞を増やす働きがあります。そのため、抗生物質を服用したあとは腸内環境を意識した食事や生活習慣を心がけるようにしましょう。

なお、最も良くない抗生物質の飲み方は「中途半端に飲むこと」です。「感染症にかかりたくないけど、アレルギーも予防したい」と考えて、処方された量を飲まないことは避けるようにしてください。

なぜなら、中途半端な抗生物質の服用は耐性菌(抗生物質が効かない菌)の出現に繋がるからです。そうなってしまうと、その耐性菌を殺すためにまた別の抗生物質が必要となり、悪循環に陥ります。

ここまで述べてきたように、幼少期における抗生物質の服用は、将来アレルギー疾患にかかる確率を高めます。これを防ぐためには抗生物質を服用した後もしっかりと腸内環境を整えておくことが重要です。特定のビフィズス菌や乳酸菌にはTh1細胞を増やし免疫細胞のバランスを整える働きがあるため、これらの摂取を心がけるようにしましょう。



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