低FODMAP(フォドマップ)食は過敏性腸症候群の症状を軽くする!


過敏性腸症候群とは、消化管に異常が見つからないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘などの症状が慢性的に続く症状のことです。日常的なストレスが原因であることが多いため、真面目な人や責任感の強い人がかかりやすいです。また、食中毒などの感染性腸炎が原因になることもあります。

過敏性腸症候群になると生活の幅が制限されてしまいます。そのため、生活習慣を見直したり早めに医療機関を受診したりすることが大切です。

ここでは、過敏性腸症候群における食生活のポイントとして「低FODMAP(フォドマップ)食」を紹介します。症状を軽くするためにも、その概要を理解しておきましょう。

※ 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome)は「IBS」と略されることが多いので、この記事でもそのように略すことにします。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。

低FODMAP食の基本


過敏性腸症候群(IBS)の症状を緩和する食事として、冒頭に紹介した「低FODMAP(フォドマップ)食」があります。

FODMAPとは、「fermentable(発酵性の) oligosaccharides(オリゴ糖) disaccharides(二糖類) monosaccharides(単糖類) and polyols(ポリオール)」の略です。低FODMAP食とは、これらの糖類の摂取を控えめにする食事のことです。

「オリゴ糖」「二糖類」「単糖類」「ポリオール」と聞くと難しいと感じるかもしれません。その場合は、特に「オリゴ糖はIBSによくない」と理解しておいてください。一般的に、オリゴ糖は腸内環境によいです。これは間違いないのですが、IBSの場合は逆効果になるのです。

単糖類果物に含まれる果糖やブドウ糖などの糖分のこと。
二糖類単糖が二個つながったもの。具体的には、乳製品に含まれる乳糖や砂糖などが該当する。
オリゴ糖単糖が複数つながったもの。玉ねぎ、大豆、ハチミツなどに多く含まれる。
さまざまなオリゴ糖が「腸内環境に良い」として販売されているが、IBSには適さない。
ポリオールキシリトールやソルビトールなどの甘味料のこと。

これらのFODMAPに該当する糖類は、大腸の腸内細菌によって発酵されてガスを生じます。その結果、お腹の張りをはじめとする腹部の不快感につながります。低FODMAP食では、このようなガスの元となる食品成分の摂取を控えることがポイントとなるのです。


FODMAPが含まれる食材を調べる方法


普段の食事に低FODMAP食を取り入れるためには、「どのような食材を避けるべきか」を把握しておかなければなりません。ここでは、低FODMAP食に便利なアプリや書籍を紹介します。

低FODMAP食を始める人のためのアプリとして「Fodmap Helper」という便利なアプリがあります。残念ながら、まだ英語版しか開発されていませんが、さまざまな食材についてFODMAPが高いか低いかまとめられています。



また、消化器専門医の江田氏が書いた下記の書籍はFODMAP食を始める人にとても評判がよいです。実際、私の友人もこの書籍の内容を実践することで、IBSの症状が改善したと絶賛していました。


また、これらのアプリや書籍を利用するのが面倒に感じる人は、下記の食材のみを摂取するようにしてみてください。これは、日本における低FODMAP食の第一人者である医師・宇野良治氏がまとめた低FODMAP食の基本食材です。


(参照:宇野コラム


このように、さまざまなツールを利用することで、普段の食事に低FODMAP食を取り入れることができます。ただ、低FODMAP食を始めるにはご家族の理解も必要です(一人暮らしは除く)。そのため、ご家族に相談した上で、低FODMAP食を取り入れることを検討してみてください。

※ 医療機関を受診している人は医師への相談も忘れないで下さい


低FODMAP食の始め方


最後に、低FODMAP食の始め方を簡単に紹介します。

まずは、普段の食事から「高FODMAP食」(乳製品や玉ねぎ、大豆、ハチミツなど)を省きます。そして、この低FODMAP食を2~4週間程度続けることにより、症状が軽くなるかどうか確認します。症状が軽くならなければ、さらに食材を絞る必要があります。

症状が軽くなった場合は、今度は逆に1つずつ控えていた食材を追加していきます。このとき、症状が再発すれば、「追加した食材がIBSの症状に関係している」ということがわかります。今後はその食材を避けることで、症状を軽減させた状態を維持することができるはずです。


このように、低FODMAP食はIBSの症状緩和に有効な食事です。低FODMAP食は日本消化器病学会でも推奨されている食事なので、試してみる価値は十分にあるでしょう。

まとめ

  • オリゴ糖などの糖分を控えた食事のことを低FODMAP(フォドマップ)食という。
  • 過敏性腸症候群には低FODMAP食が有効である。実際、日本消化器病学会でも低FODMAP食が推奨されている。
  • 低FODMAP食に少しずつ高FODMAPの食材を追加することで、IBSの症状の原因となっている食材を突き止めることができる。
今回は、過敏性腸症候群(IBS)における食事の注意点について述べてきました。低FODMAP食を普段の食事に取り入れるためには、家族の理解も不可欠です。ご家族とも相談した上で、食生活を見直してみるようにしましょう。



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