急な下痢が起こる原因とその対処法

下痢には急性的なものと慢性的なものがあります。急に始まって2週間以内に治まるのが「急性的な下痢」で、1か月以上も続く下痢が「慢性的な下痢」です。

急性的な下痢か慢性的な下痢かは、「下痢の原因がどこからやってきたか」によって決まることが多いです。

例えば、暴飲暴食や食中毒による下痢を考えてみてください。この場合、体の外から体内に入ってきたものが下痢の原因になります。一般的に、このような場合は「急性的な下痢」になり、適切に対処すれば数日で症状は治まります。

一方、体の中に何らかの不調があって下痢になる場合があります。例えば、現代人に多いとされる過敏性腸症候群(主にストレスが原因の下痢)や炎症性腸疾患による下痢の場合は「慢性的な下痢」になります。この場合は医療機関でしっかりと診てもらう必要があります。

今回は急性的な下痢に焦点を当てて話を進めていきます。数日で症状が治まるとはいっても症状はつらいものです。場合によっては受診を必要とすることもあるため、原因や適切な対処法をしっかりと把握しておきましょう。

急な下痢が起こる原因①:暴飲暴食


多くの人が経験していると思いますが、食べすぎ・飲みすぎが原因で下痢になることがあります。また、油っぽいものを食べたときも下痢になることがあります。特に、油っぽいものと冷たいアルコールのセットには要注意です

私は30歳を超えてからは焼肉や辛い中華料理を食べた翌日にお腹をくだしやすくなりました。

また大変お恥ずかしい話ですが、若かりし頃、みかん狩りに行ってみかんを食べまくったことがあります。2時間で約30個食べた結果、その帰り道でくだしてしまいました。

このように暴飲暴食は下痢の原因になります。少し専門的になりますが、暴飲暴食による下痢は「浸透圧性下痢」や「消化管運動異常性下痢」という下痢に該当します。

浸透圧性下痢とは、腸管内の浸透圧(水を引き寄せる力)が強くなることによって生じる下痢です。主に食べた物が消化不良となることが原因で起こります。

また消化管運動異常性下痢とは、腸のぜん動運動が活発化することによって生じる下痢です。主にアルコールの摂取などが原因で起こります。

急な下痢が起こる原因②:細菌やウィルスの感染

ノロウィルスや腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌O-157などの病原体が食べ物とともに口から体内に入ると食中毒になってしまいます。また、食べ物ではなく、空気から感染する病原体もいます。例えば、風邪の原因となるウィルスは空気感染します。

以下、食中毒と空気感染について解説していきます。

食中毒
ノロウィルスや腸炎ビブリオなどの病原体は、体内で増殖して消化管を傷つけたり毒素を産生したりします。その結果「分泌性下痢」や「滲出性(しんしゅつせい)下痢」という下痢を引き起こすのです。

分泌性下痢は、病原体の毒素が原因で消化管内に大量の水分が分泌されることによって生じます。

滲出性下痢は、病原体によって腸粘膜が傷つけられ、そこから血液や腸液が漏れることによって生じます。そのため、この下痢は便に血が混ざるという特徴があります。

どちらの種類の下痢になるかは病原体の種類によって異なります。また病原体の種類によって腹痛や発熱を伴うことがあります。

なお、私は学生の頃に牡蠣を食べて食中毒になったことがあります。下痢だけでなく、腹痛、発熱、複数回の嘔吐などの症状があらわれ、大変苦しい思いをしました。

当時はあまり知識がなかったため、自己判断で自然治癒させてしまいました。そのため、いったい何に感染していたのかはわかりませんが、感染時期や症状から、おそらくノロウィルスに感染していたと推測しています。

病原体の空気感染
風邪をひいて下痢になった経験がある人も多いと思います。風邪の主な原因はライノウイルスやコロナウイルスなどの感染です。つまり、ウィルスに感染すると下痢になることがあるのです。

ウィルスの空気感染は予防することが難しいです。「寝不足などで体力が低下しないように気を付ける」「風邪をひいている人にはあまり近づかない」「マスクをつける」などの工夫をしましょう。

急な下痢が起こる原因③:薬の副作用

薬の副作用で下痢になる場合があります。具体的には、便秘薬(下剤)、抗生物質、逆流性食道炎の薬、抗がん剤などが該当します。

便秘薬は便の排泄を促す薬なので、飲みすぎると当然下痢になります。

抗生物質は細菌を殺す薬です。ふつうは病原体を殺すために処方されるのですが、薬の性質上、お腹の中にいる腸内細菌も大量に殺菌してしまいます。善玉菌も例外ではありません。そのため、抗生物質を服用すると腸内環境が一時的に劇変してしまうのです。

実際、私の友人は抗生物質の服用で下痢になりました。彼は蓄膿症(鼻の奥に膿が溜まる病気)の治療のために抗生物質を服用していましたが、その間ずっと下痢に悩まされていたのです。抗生物質の服用を終えると下痢も改善したことから、抗生物質が原因だったと考えられます。

また、逆流性食道炎の薬や抗がん剤の中には副作用として下痢を発生させるものがあります。例えば、多くのがんに使用されるイリノテカンという抗がん剤は、まれに重篤な下痢を引き起こすことで知られています。

このように、薬を飲むことによって急な下痢が起こる場合があるのです。

急な下痢が起こる原因④:体の冷え、環境の変化、ストレス

体が冷えていると自律神経のバランスが崩れやすくなります。また、引っ越しなどの環境変化や何らかの強いストレスがあると、一時的に自律神経のバランスが崩れやすくなります。

自律神経とは副交感神経と交感神経のことを指します。そしてこれらのバランスが崩れると便秘や下痢などの便通異常を生じてしまうのです。女性は便秘になりやすく、男性は下痢になりやすい傾向があります。

この場合、慢性化しないように日常生活を見直してみることが大切です。

急な下痢の注意点①:下痢止め薬

下痢止め薬は常備薬として各家庭に置かれていることが多いです。ただ、下痢のときはいつでも下痢止め薬を飲んでよいというわけではありません。実は、下痢は止めないほうがよいこともあるのです。

例えば、細菌やウィルスの感染で起きた下痢の場合、下痢止め薬は飲まない方がよいです。

この場合、腸の中にある毒素や病原体を早く除去するためにも、積極的に便として排泄したほうがよいです。下痢はある意味正常な防御反応ともいえるのです。

また、便に血が混じっているときも原因がはっきりわかるまでは下痢止め薬は飲まないほうがよいでしょう。

一方、これらに該当しない場合は下痢止め薬を飲んでも構いません。むしろ、体力を回復させ、脱水症状にならないようにするためにも、注意書きに従って適切に飲むようにしましょう。

急な下痢の注意点②:水分補給、食事

下痢でもっとも注意しなければならないのは脱水症状です。

脱水症状では水分だけでなく、電解質(ナトリウムやカリウムなど)も失われます。そのため、水分だけではなく電解質も適切に補給する必要があります。

身近なものとしてはスポーツドリンクを摂取するのがよいです。ただ、スポーツドリンクは糖分が多くナトリウム濃度が低いです。そのため、たくさん飲む場合は水で薄めて、少し塩分を加えてから飲むのが良いでしょう。

スポーツドリンクが手元にない場合は、水500mLに砂糖10~20g、塩1.5gを混ぜたものを飲んでください(経口補水液といいます)。また、味噌汁を飲んでも構いません。

そして消化の良いものを摂るようにしましょう。具体的には、おかゆ、よく煮込んだうどん、野菜スープ、リンゴのすりおろしなどが該当します。

なお、コーヒーや炭酸飲料、アルコール類はお腹に刺激を与えるので避けましょう。また油っぽい食べ物や消化の悪いもの(玄米、生野菜、オリゴ糖など)も避けましょう。

ここまで、急な下痢が発生する原因とその対処法について述べてきました。急な下痢は一過的な場合が多く、数日すれば治まることがほとんどです。

しかし、重い症状の場合は医療機関を受診した方がよいこともあります。特に「便に血が混ざっている」「吐き気や発熱がある」「まわりの人も下痢になった(集団食中毒)」などの場合は迷わず医療機関を受診してください。



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