食物繊維は五大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)に次ぐ「第六の栄養素」と言われる大事な栄養素です。食物繊維にはさまざまな働きがありますが、もっとも代表的なのは「お腹の調子を整えて排便を促す」という働きです。
このような働きがあるため、便秘解消のために食物繊維を意識的にたくさん摂取している人もいるでしょう。ただ、食物繊維の種類をしっかり把握しておかないと、かえって便秘が悪化することもあります。
そこで今回は、食物繊維の種類と便秘の関係について解説していきます。食物繊維に関する理解を深めて便秘を解消していきましょう。
1.食物繊維には「不溶性」と「水溶性」の2種類がある
食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。わかりにくい表現ですが、要は、「胃や腸で消化・吸収されない成分」のことです。
この定義の中で「総体」という言葉が使われているのは、食物繊維にはさまざまな種類があるからです。
例えば、キャベツやレタスなどの野菜類や大豆などの豆類には、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの食物繊維が含まれます。(高校時代に生物や化学を学習した人であれば、セルロースという単語を覚えているかもしれませんね)
これらはすべて植物の細胞壁(細胞の一番外側にある硬い壁)を構成している成分です。いずれの成分も水には溶けないため、「不溶性食物繊維」と呼ばれます。
一般的に食物繊維と言うと、この不溶性食物繊維をイメージされることが多いです。
しかし、食物繊維には水に溶ける「水溶性食物繊維」というものもあります。あまり馴染みがない言葉かもしれませんが、ペクチン、イヌリン、βグルカン、難消化性デキストリン、アルギン酸などの成分が水溶性食物繊維になります。
ペクチン | 柑橘類やりんごなどに多い |
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イヌリン | ごぼう、玉ねぎ、菊芋などに多い |
β-グルカン | 大麦(押し麦、もち麦)に多い |
難消化性デキストリン | サプリメントやコカ・コーラプラスのような飲み物に含まれる |
アルギン酸 | 昆布やわかめなどの海藻類のぬめり成分 |
このように、不溶性食物繊維や水溶性食物繊維の中にもさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴があります。それぞれの食物繊維の特徴を細かく知る必要はありませんが、ここでは「不溶性」と「水溶性」の大きく2種類に大別されることを知っておいてください。
2.不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の働き
ここからは不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の働きについて確認していきましょう。
不溶性食物繊維には、「う〇ちのかさを増やして腸壁を刺激し、消化管運動(食べたものを肛門方向へと移動させる収縮運動)を活発化させる」という働きがあります。
一方、水溶性食物繊維には、「水に溶けてう〇ちを柔らかくする」という働きがあります。
<ひとくちメモ>
今回のテーマからは外れますが、水溶性食物繊維には、「善玉菌のエサになって善玉菌を増やす」という働きもあります。また、両食物繊維には「血糖値やコレステロールの上昇を抑えて生活習慣病を予防する」という働きもあります。このように、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維には異なる働きがあります。そしてこれらの特徴の違いを把握しておくと、便秘解消には不溶性食物繊維だけでは不十分ということがわかると思います。
3.食物繊維をとるときに注意すること
便秘で悩んでいる人の場合、すでに腸の中に固くなったう〇ちが滞留しています。そのため、まずはこのう〇ちを柔らかくして排出する必要があります。
このときに不溶性食物繊維ばかりとってしまうとどうなるでしょうか? う〇ちのかさが増えて、より一層詰まってしまう恐れがあります。お腹が張って余計つらくなってしまうこともあり得ます。
もうおわかりだと思いますが、便秘の人はう〇ちを柔らかくするためにも水溶性食物繊維を積極的にとったほうがいいのです。
一般的に、「水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:2」の割合で摂取することが推奨されていますが、この数値にはほとんど根拠がありません。また、普段の食事で正確に測定することは不可能でしょう。したがって、この割合にこだわる必要はありません。
ただ、日本人は水溶性食物繊維が不足する傾向にあります。下のグラフは各年代における不溶性食物繊維(水色)と水溶性食物繊維(オレンジ)の摂取量を示したものです。
このグラフからも「日本人が摂取する食物繊維は不溶性に偏っている」ということがわかると思います。
なお、厚生労働省は「成人女性の場合、1日18グラム以上」、「成人男性の場合、1日21グラム以上」の食物繊維の摂取を推奨しています(2020年 日本人の食事摂取基準)。ところが、日本人の平均摂取量は1日14グラム程度です。特に20代女性においては、1日12グラムほどしか取れていません。
ただでさえ食物繊維の摂取量が足りていないのに、さらに摂取する食物繊維が不溶性に偏っていることからも、日本人がいかに水溶性食物繊維不足なのか理解できると思います。
このような状況があるため、便秘の人は特に「水溶性食物繊維をとる!」ということを意識しておいてください。
4.まとめ
- 食物繊維には「不溶性」と「水溶性」の2種類がある。
- 不溶性食物繊維には「う〇ちのかさを増やして腸壁を刺激し、消化管運動を活発化させる」という働きがある。
- 水溶性食物繊維には「水に溶けてう〇ちを柔らかくする」という働きがある。
- 便秘の人は不溶性よりも水溶性を意識して摂取したほうがいい。