日本人に「やせ菌」「デブ菌」は存在しない?!セールストークに要注意

この記事のポイント


腸活やダイエットに興味のある人であれば、やせ菌とかデブ菌という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか? その名の通り、「やせ菌」は痩せている人に多い腸内細菌、「デブ菌」は太っている人に多い腸内細菌です。

腸活ダイエットをするのであれば、できればやせ菌を増やして、デブ菌を減らしていきたいですよね?

でも、2022年に発表された研究論文によると、日本人にはやせ菌・デブ菌の概念が当てはまらないことがわかりました。つまり、日本人の場合は、やせ菌を増やしたりデブ菌を減らすことにほとんど意味がないのです。

そこで今回は、日本人とやせ菌・デブ菌の関係について解説した後、腸活ダイエットを進める上で、それよりも大切なポイントを述べていきます。腸活ダイエットをやってみたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。


【筆者】山口 幸三

  • 2003年:北海道大学農学部 卒業
  • 2005年:北海道大学大学院農学研究科 修士課程 修了
  • 2005年~2017年:協和発酵工業株式会社(現 協和キリン株式会社)
    がんや腸内細菌に関するプロジェクトのサブリーダーとして研究を牽引。
  • 2019年:株式会社フローラボ設立
腸内環境に関する専門知識を背景に腸活関連の事業を推進。現在は、腸内フローラ解析にもとづいたパーソナル腸活(その人に合った腸活)のサポート、腸活ダイエットのサポート、腸活勉強会の主催などを行っている。


1.「やせ菌」「デブ菌」とは?


まずは「やせ菌」と「デブ菌」について復習しておきましょう。

私たちのお腹の中には100兆個以上もの腸内細菌がいます。これらの腸内細菌は大きく4つのグループに分けられます。(専門用語になってしまいますが、、バクテロイデス、ファーミキューテス、プロテオバクテリア、アクチノバクテリアという4つのグループです)。

このうち、痩せている人にはバクテロイデスが多く、太っている人にはファーミキューテスが多いことから、「バクテロイデスがやせ菌」「ファーミキューテスがデブ菌」と考えられるようになったのです。


腸内細菌の「門」レベルでの分類

<参考記事>
太る原因は「腸内細菌」にある!



この「やせ菌」「デブ菌」というのは、米国ワシントン大学のジェフリー・ゴードン教授が2006年ごろに発見したものです。その後、世界中の研究者がこれらの腸内細菌に注目して研究するようになりました。

実際、「やせ菌:デブ菌」の比が肥満度に関係することもわかってきました。そのため、やせ菌(バクテロイデス:Bacteroidetes)とデブ菌(ファーミキューテス:Firmicutes)の頭文字を取ってFB比という言葉も生まれました。

例えば、やせ菌の占める割合が全体の30%、デブ菌の占める割合が全体の60%だった場合、FB比は2.0(60÷30)ということになります。そして、このFB比の値が大きいほど太りやすいと考えられるようになったのです。


2.日本人には「やせ菌」「デブ菌」の概念はあてはまらない?!


このように、やせ菌・デブ菌やFB比というのは肥満やダイエットにとても密接に関わっています。しかし、実は日本人にはこの概念が当てはまらないことがわかりました。これは2022年に神戸大学の研究チームによって論文で報告されています。(参考文献:Biosci Microbiota Food Health

以前から「日本人にはやせ菌・デブ菌は当てはまらないのでは?」と議論されていたのですが、2022年の論文では6000名を超える大規模調査によって改めてそのことが証明されたのです。

この論文の一部を抜粋して日本語に訳すと以下のようになります。

太っている人たちのFB比は痩せている人あるいは標準体型の人たちよりも低かった(痩せている人たちのFB比 1.26、標準体型の人たちのFB比 1.24、太っている人たちのFB比 1.20)

日本人の肥満度とFB比の関係

このように日本人の場合、FB比が高いからと言って太りやすいわけではありません(むしろ、FB比が高いほどやせやすい?)。6000名を超える大規模調査の結果なので、おそらくこれが真実なのでしょう。

腸活業界の中では、「やせ菌・デブ菌」という言葉が流行していますし、「デブ菌を減らすために〇〇のサプリを飲みましょう!」というセールストークも耳にします。ただ、少なくとも日本人に関してはこれらのことは無視してもよさそうですね。


3.腸活ダイエットをする人が腸内フローラ解析で見るべきポイントとは?


最後に腸内フローラ解析のことを述べておきます。

いま、腸活業界のなかでは腸内フローラ解析が流行っています。うんちを分析することで、あなたの腸の中にどんな腸内細菌がいるか”見える化”するのです。

※下の写真は弊社で取り扱っている腸内フローラ解析キットです。

腸内フローラ解析キットの中身


日本国内だけでも数多くの腸内フローラ解析キットが出回っていますが、だいたいどこの解析キットを使ってもFB比が算出されます。弊社が取り扱っている解析キットでも下記のようにやせ菌とデブ菌の割合がデータとして出てきます。

フローラ解析の結果(FB比)


ただ、ここまで述べてきた通り、この結果にはほぼ意味がありません(笑)したがって、私がお客様に解析結果の説明をするときも「やせ菌:デブ菌の割合」に関してはあまり触れません。それよりも、腸活ダイエットをするときはもっと大事なところがあるので、そこをチェックするようにします。

具体的には、多様性ビフィズス菌酪酸菌です。これらは腸活ダイエットをするうえでとても大事な指標なので重点的にチェックします。(あとはマイナーな菌にも着目しますが、それについてはここでは割愛します)。


フローラ解析の結果(多様性・ビフィズス菌)


多様性というのは「腸の中に何種類の腸内細菌がいるか?」を数値化したものです。太っている人は多様性が低く、痩せている人は多様性が高い傾向にあるため、多様性はとても大事な指標になります。

また、ビフィズス菌は酢酸という物質を作ってくれますし、酪酸菌は酪酸という物質を作ってくれます。これらの物質がダイエットに効果を発揮してくれるので、ビフィズス菌と酪酸菌の割合も腸活ダイエットをするうえではとても大切になってきます。

<参考記事>
短鎖脂肪酸のダイエット効果:善玉菌と食物繊維の相乗効果でやせる!


このように、腸活ダイエットをする際は、腸内細菌の多様性やビフィズス菌、酪酸菌の割合を増やすように取り組んでいきましょう。そのためにも、オリゴ糖や水溶性食物繊維などの栄養素を積極的にとるようにしてください。

<参考記事>
善玉菌の一種「酪酸菌」の役割と酪酸菌を増やすための食事



4.まとめ

  • 腸内細菌の中には痩せている人に多い「やせ菌」や太っている人に多い「デブ菌」がいる。実際、やせ菌が少なくてデブ菌が多い人ほど太りやすい(外国人の場合)。
  • しかし日本人の場合、やせ菌・デブ菌は肥満に関係しないことが明らかとなった。
  • したがって、日本人はやせ菌・デブ菌のことは気にしなくてもよい。それよりも腸内細菌の多様性(種類の多さ)やビフィズス菌、酪酸菌の割合を重視したほうがよい。
今回は日本人におけるやせ菌・デブ菌の特徴と、腸活ダイエットをするときに確認すべきポイントについて解説してきました。腸活業界では「やせ菌」「デブ菌」という言葉が流行っていますし、セールストークに利用されることも多いですが、このような言葉にあまり踊らされることなく着実に淡々と腸活ダイエットを進めていってください。



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