アトピーの症状緩和に有効なポリアミンとビフィズス菌LKM512

私たちの腸には、食事を介して多数の細菌やウィルスが入ってきます。そのため、腸のバリア機能が発達しています。

特に小腸では、細菌やウィルスを攻撃するための抗体が分泌されたり、多数の免疫細胞が集まっていたりします。また腸管全体では、腸管表面の細胞同士が強く結合していて、腸の内容物が血管に漏れないようになっています。

そして、特に後者の機能を増強する物質として「ポリアミン」という物質があります。ポリアミンは納豆や発酵乳などに含まれる物質です。またポリアミンは、腸内細菌によって腸内で作られていることもわかっています。

ポリアミンには、「バリア機能の強化」以外にもさまざまな働きがあります。特に、炎症の抑制や免疫の調節など、アレルギー症状の軽減に関わる機能を有しています。そして実際に、「ポリアミンがアトピーの症状を軽減する」ことが明らかにされています。

そこで今回は、ポリアミンの特徴について解説していきます。また、腸内のポリアミン濃度の上昇に関わる「ビフィズス菌LKM512」についても述べていきます。ビフィズス菌の力でアトピーの症状を軽減できる可能性があるため、アトピー性皮膚炎でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

アトピー性皮膚炎患者や高齢者では、腸内のポリアミンが減っている

ポリアミンとは「プトレシン」、「スペルミジン」、「スペルミン」の3種類の物質の総称です。これらの物質が腸管内で「バリア機能の増強」、「免疫の調節」などの重要な働きをしているのです。

過去の研究から、アトピー性皮膚炎の患者や高齢者では、腸内のポリアミン濃度が低下していることがわかっていました。そのため、腸内のポリアミン濃度を上げることで、アトピー性皮膚炎の改善や老化予防に効果があるのではないかと期待されていました。

そこでポリアミンの機能に関する研究が進められました。ただ、ポリアミンの研究を行う上で一つ問題がありました。それは、「食品を介してポリアミンを摂取しても、腸内のポリアミン濃度は上がらない」ということです。

なぜなら、食事由来のポリアミンは小腸から容易に吸収されるからです。そのため、口からポリアミンを摂取しても、腸内のポリアミン濃度を高く維持することができませんでした。

そこで、腸内のポリアミン濃度を上げるために別の対策が考えられました。

腸内のポリアミンを増やすビフィズス菌LKM512

上述の通り、腸内細菌もポリアミンを作ります。そこで、ビフィズス菌や乳酸菌を利用して腸内のポリアミンを増やすことが考えられました。

そして開発されたのがビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)LKM512というビフィズス菌です。これは国内の某乳製品メーカーが、「腸内のポリアミンを増やすビフィズス菌」として開発した細菌です。ここではビフィズス菌LKM512と呼ぶことにします。

ビフィズス菌LKM512は胃酸に強く、生きたまま大腸まで届くという特徴があります。そして、大腸内で他の腸内細菌に働きかけて、ポリアミンの生産を促進する働きがあるのです。

上述の通り、アトピー性皮膚炎の患者においても腸内のポリアミンが減っていることがわかっていました。そこで、アトピー性皮膚炎の患者にビフィズス菌LKM512の効果を試す試験が行われました。

ビフィズス菌LKM512はアトピーの症状を緩和する

アトピー性皮膚炎の患者に一ヶ月間、ビフィズス菌LKM512を含むヨーグルトを食べてもらいました。すると、被検者全員(10名)の腸内ポリアミン濃度が上昇しました。そして驚いたことに、かゆみなどの自覚症状が改善していたのです。

さらに、これらのデータを裏付けるように、ビフィズス菌LKM512を摂取することによって免疫細胞の機能が調節されていることも確認されました。

ここまで述べてきたように、腸内のポリアミン濃度を増やすことで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和されることが示されています。

ただ、食事を介してポリアミンを摂取したとしても、小腸で容易に吸収されるため、腸管内濃度はあまり上がりません。そのため、ビフィズス菌LKM512を利用するなどして、腸管内濃度を上げることが有効です。



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