花粉症の悪化・改善に関係する腸内細菌

腸は「免疫」と密接に関係している臓器です。

免疫とは、体内に入ってきた「異物」を排除するための防御機構のことです。小腸には食事を介して多くの異物(細菌やウィルスなど)が入ってくるため、免疫機能が発達しているのです。

腸は重要な免疫器官なので、腸内環境は免疫やアレルギー疾患に強く関係します。

※ アレルギー:花粉、ダニ、ほこり、食べ物などを「異物」とみなして、過剰な免疫反応が起こること。花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など。

そこで今回は、花粉症と腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内細菌全体のバランスのこと)との関係について述べていきます。またビフィズス菌BB536(Bifidobacterium longum BB536)による花粉症の改善効果と腸内細菌叢への影響についても解説します。

花粉症と腸内細菌叢の関係を把握することで、腸内環境の改善が花粉症改善に繋がることを理解できるようになります。花粉症にお悩みの方は参考にしてみてください。

花粉による腸内細菌バランスの乱れとビフィズス菌BB536の効果

悪玉菌の一種にバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)という細菌がいます。ここではフラジリス菌と呼ぶこととします。

そして、「花粉症の人では、花粉の飛散に応じて腸内のフラジリス菌が増加する」ということが2007年に明らかにされました。そのため、花粉症の発症にフラジリス菌が何らかの関与をしている可能性があります。

このことを発見したのは、ビフィズス菌BB536を開発した日本の某乳製品メーカーの研究者です。その研究成果を以下に要約します。

  • 花粉症の人では、1月から4月にかけて、腸内細菌叢に占めるフラジリス菌の割合が大きくなった。
  • 健康な人では、このような変動は見られなかった。
  • 花粉症であったとしても、花粉飛散前から「ビフィズス菌BB536を含むヨーグルト」を摂取することで、フラジリス菌の増加を抑制できた。
  • ビフィズス菌BB536を摂取した人では、目のかゆみなどの症状が緩和された。


<ビフィズス菌BB536を摂取しなかった花粉症患者>
1月~4月にかけて「フラジリス菌/ビフィズス菌」の比がどんどん増加しています。実際には、フラジリス菌が増加し、ビフィズス菌が減少するため、「フラジリス菌/ビフィズス菌」の値は大きくなっています。

<ビフィズス菌BB536を摂取した花粉症患者>
花粉の飛散に関わらず、「フラジリス菌/ビフィズス菌」の比は一定に保たれます。実際には、フラジリス菌はわずかに増えているのですが、ビフィズス菌も増加したため、「フラジリス菌/ビフィズス菌」の比は一定となっています。

このようにビフィズス菌BB536には、ビフィズス菌を増やし、フラジリス菌の増加を抑制する働きがあります。そして、腸内環境の乱れを抑えたことで、花粉症の症状緩和に繋がった可能性があります。

ビフィズス菌BB536は免疫細胞のバランスを整える

上記の試験では、花粉症患者の血液を用いた実験も行われました。血液を調べることで、過剰な免疫反応が起こっていないかを知ることができます。

以下に、血液中に含まれる免疫細胞について解説します。

    • 血液の中には赤血球や白血球などの細胞があります。白血球の中には免疫に重要なさまざまな細胞があります。

    • 白血球の中にはヘルパーT細胞というとても重要な免疫細胞があります。ヘルパーT細胞は免疫反応の「司令塔」と呼ばれるほど重要な細胞です。

    • ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞という2つのタイプがあります。Th2が多いと花粉に対する免疫反応が活発化し、多くの抗体が作られます。一方、Th1はTh2の働きを抑える役割があります。

  • そのため、免疫反応を正常な状態に保つためには、Th1とTh2のバランスが重要です。しかし一般的に、花粉症患者ではTh2細胞が増加しており、そのバランスが崩れています。

このように、花粉症の症状にはTh1とTh2のバランスが重要であることがわかります。

そこで花粉症患者の血液を用いて、フラジリス菌とビフィズス菌の菌体成分が、Th1とTh2のバランスにどのように影響するかが調べられました。

その結果、フラジリス菌の菌体成分によってTh2細胞がさらに増えることが判明しました。逆に、ビフィズス菌の菌体成分によって、Th1細胞が増加しました。このことから、「フラジリス菌は花粉症を悪化させ、ビフィズス菌は花粉症を改善する可能性がある」ということが示されました。

ここまで述べてきたように、花粉症と腸内細菌バランスには密接な関係があります。特にフラジリス菌の増加は、花粉症の悪化に関係している可能性があります。そして、ビフィズス菌BB536の摂取により、フラジリス菌の増加と花粉症症状が抑制されることが示されています。

私自身も、BB536を摂取することで花粉症の症状が軽減した経験があります。ただ、腸内細菌叢を調べたわけではないので、上記のような変化があったかどうかはわかりません。またビフィズス菌BB536の効果ではなく、単に加齢に伴って体質が変化しただけかもしれません。

一概に「BB536の効果」とは言い切れないのですが、花粉症でお悩みの方は試してみる価値はあると思っています。



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