善玉菌の良い点と悪い点:ビオチンの生産・消費と頭髪への影響

一般的に、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌には、体の調子を整える効果があるといわれています。

例えば、整腸作用、血圧調整作用、血中コレステロール低下作用などの体に有益な作用があります。また乳酸菌やビフィズス菌が作る乳酸や酢酸などの物質は腸内を弱酸性にすることで、病原菌の増殖を防ぎます。さらに、ビフィズス菌は酪酸菌に働きかけて、免疫機能の制御に重要な酪酸の産生を促します。

このように乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は体にとって大変有益です。

ただ、薄毛に悩む人にとっては少し注意が必要な場合があります。なぜなら善玉菌の中には、発毛(育毛)に重要な「ビオチン」という物質を消費するものもいるからです。

そこで今回は、ビオチンの生産・消費という観点から、発毛(育毛)と善玉菌との関係について述べていきます。これを学ぶことで、薄毛に悩む人が、善玉菌を含むサプリメントやヨーグルトを選ぶ際のポイントを理解できるようになります。

ビオチンと発毛・脱毛との関係

ビオチンは、水溶性ビタミンの一種でビタミンB7とも呼ばれます。生体内では、さまざまな酵素の働きを助ける作用があります。そして、このような作用をする物質を「補酵素」といいます。

ビオチンは、補酵素として働くことで、体のさまざまな機能を調節しています。コラーゲンなどのタンパク質の生成にも関わっているため、皮膚の機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。

また、発毛(育毛)に重要な栄養素でもあります。実際、体内のビオチンの量が少なくなると白髪や抜け毛が増えるといわれています。そのため、薄毛に悩む人の中には、サプリメントからビオチンを摂取する人もいます。

抗生物質を服用する場合はビオチンの摂取を心がける

ビオチンはレバー、豆類、酵母、卵黄、魚などに多く含まれています。また、腸内細菌の中には、ビオチンを生産するものも存在します。そのため、普通の生活をしている限り、体がビオチン不足になることはありません。

ただ、抗生物質を服用した場合は注意が必要です。抗生物質は体内の細菌を殺す薬であるため、これを服用すると腸内細菌も殺菌されてしまいます。その結果、体内で作られるビオチンの量が少なくなってしまうのです。

※ 抗生物質の種類にもよりますが、全ての腸内細菌が殺菌されるわけではありません。

抗生物質を服用するときは、ビオチンを含む食品を食べるように心がけましょう。また、善玉菌を含むサプリメントやヨーグルトを摂取する場合は、その善玉菌の種類に注意する必要があります。なぜなら、上記の通り、善玉菌の中にはビオチンを消費するものもいるからです。

ビオチンの生産・消費に関わる善玉菌

以下に「ビオチン生産性」を指標にして善玉菌を分類します。

ビオチンを生産する善玉菌
  • ビフィズス菌BB536(Bifidobacterium longum BB536)
  • クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum):酪酸菌の一種です。宮入菌という名前でサプリメントとして売られています。
  • アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus):乳酸菌の一種です。

ビオチンを消費する善玉菌
  • フェカリス菌(Enterococcus faecalis):乳酸菌の一種です。腸球菌とも呼ばれます。
  • ラクトバチルス・ムリナス(Lactobacillus murinus):乳酸菌の一種です。
  • ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum):乳酸菌の一種です。
  • ビフィズス菌JBL01(Bifidobacterium longum JBL01)

このように、一般的に善玉菌と考えられている乳酸菌やビフィズス菌であっても、種類によってビオチンの生産性は異なるのです。

最後に、ここまで記載したことを裏付ける研究成果を紹介したいと思います。これは、2016年に開催された腸内細菌学会で、慶応大医学部の金井教授が報告した内容になります。
  • マウスにバンコマイシンという抗生物質を飲ませました。これにより多くの腸内細菌が殺菌されましたが、ラクトバチルス・ムリナス(ビオチンを消費する細菌)は生き残りました。
  • さらに「ビオチンを含まない餌」をマウスに与え続けました。すると、マウスは完全に脱毛してしまいました。
  • 「ビオチンを含む餌」に変更したり、クロストリジウム・ブチリカム(ビオチンを作る細菌)を飲ませたりすることで、マウスの毛が生えてきました。

このように、抗生物質を服用したときにビオチンを含まない食事を続けていると禿げてしまう可能性があるのです。あくまで動物実験の結果ですが、薄毛に悩む人は注意したほうがよいでしょう。抗生物質を服用したときは、ここに記載した内容を参考に、ビオチンを作る善玉菌を摂取するように心がけましょう。



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