過敏性腸症候群とは、通常の検査では異常が見つからないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘などの症状が慢性的に続く症状のことです。日常的なストレスが原因であることが多いため、神経質な人や責任感の強い人に症状が出やすいです。
過敏性腸症候群と腸内細菌との関係に関する研究は世界中で行われています。そして、善玉菌の代表格であるビフィズス菌が過敏性腸症候群の症状緩和に役立つこともわかってきました。
そこで今回は、過敏性腸症候群と腸内細菌との関係について解説していきます。また、ビフィズス菌の効果や摂取する際の注意点についても述べていきます。
※ 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome)は「IBS」と略されることが多いので、この記事でもそのように略すことにします。
1.過敏性腸症候群(IBS)における腸内細菌の特徴
さまざまな研究から、IBS患者と健康な人では腸内細菌のバランスが異なることがわかっています。例えば、IBS患者では健康な人に比べてビフィズス菌の割合が減っていることが判明しています。逆に、乳酸菌やベイロネラという腸内細菌が増えています。
ベイロネラは乳酸をエサにして増殖する細菌です。そのため、「IBSで乳酸菌が増加 → 乳酸が大量に作られる → ベイロネラが増殖」という流れでベイロネラが増えたと考えられます。
このように、IBS患者のお腹の中では特徴的な腸内細菌の変化が認められています。特に、善玉菌の代表格であるビフィズス菌が減少していることに注目する人も多いです。
2.過敏性腸症候群(IBS)にはビフィズス菌が有効
IBS患者に善玉菌を飲ませて効果を調べた研究は複数あります。そして、それらの研究結果から総合的に判断すると、「ビフィズス菌は乳酸菌よりもIBSの症状緩和に有効」と考えてよいと思います。
例えば、IBS患者75名を3つの組に分け、各組にビフィズス菌 or 乳酸菌 or プラセボ(偽物の薬)を飲ませて効果を検証した例があります。そして、それぞれの効果を比較したところ、ビフィズス菌を飲ませた場合にのみ症状が改善することが判明しました。
一方、乳酸菌の場合は判断が難しいケースが多いです。
例えば、IBS患者25名にプランタラム乳酸菌という乳酸菌(漬物やキムチなどにいる乳酸菌)を飲ませることで症状が改善したという論文報告があります。しかし、同じ乳酸菌を飲ませた場合でも効果はなかったという論文もあります。
これらはほんの一例ですが、乳酸菌の効果については判断が難しい場合があります。上述のとおり、IBS患者の腸内では乳酸菌が増えていることもあるため、善玉菌だからといって、乳酸菌が症状改善につながるとはなかなか考えにくいです。
このように、ビフィズス菌のほうが乳酸菌よりも有効であるケースが多いです。そのため、IBSの症状を緩和するために、ビフィズス菌の摂取を奨める医師もいます。
3.ビフィズス菌を摂取するときの注意点
上述のとおり、IBSの症状緩和にビフィズス菌が役立つことがあります。ただ、一つだけ注意点があります。それは、「ヨーグルトからのビフィズス菌摂取は控えたほうがよい」ということです。なぜなら、ヨーグルトには「乳糖」という糖類が含まれているからです。乳糖は小腸で消化・吸収されにくく、大腸まで届きます。そして、大腸内で発酵されてガスを生じるため、腹部膨満感などの不快感につながってしまいます。
そのため、ビフィズス菌を摂取するときは、サプリメントなどを利用したほうがよいでしょう。
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4.まとめ
- 過敏性腸症候群の患者の腸内細菌バランスには特徴がある。具体的には、「ビフィズス菌の減少」や「乳酸菌およびベイロネラの増加」などが認められている。
- ビフィズス菌は過敏性腸症候群の症状緩和に有効である。
- ビフィズス菌を摂取するときはなるべくヨーグルトは避けて、サプリメントなどを利用したほうがよい。