「便秘の人の腸内環境は悪い」ということはある程度イメージできると思います。便秘の人はお腹が張っていて、おならも臭いです。おならが臭いということは、腸の中で腐敗物質を作る悪玉菌が増えているということです。
一般の書籍やインターネットサイトなどでも「便秘の人のお腹には悪玉菌がうじゃうじゃいる」といった表現で説明されることが多いです。
では、実際にどれくらい腸内環境は悪くなっているのでしょうか? 本当に悪玉菌は「うじゃうじゃ」増えているのでしょうか?
今回は便秘の人の腸内環境について、実際のデータをもとに解説していきます。便秘の人は「腸内環境を改善することが大切」ということが理解できるはずです。
1.便秘になるとやせ菌が減ってデブ菌や悪玉菌が増える
ここでは学術論文として発表されているデータを元に解説を進めていきます。その内容を要約すると以下のようになります。(参考文献:Physiol Genomics)
- 2週間以上、スムーズに排便できていない人を8名集めました。この人たちを「便秘グループ」とします。
- 便秘ではない人たちを14名集めました。この人たちを「普通グループ」とします。
- 「便秘グループ」と「普通グループ」の人たちの腸内細菌を解析しました。
※被験者が少ないのが気になりますが、、(汗)ただ、下記に示すとおり、それぞれの腸内細菌の傾向は読み取れます。
各グループの腸内細菌を解析したところ、便秘グループでは普通グループの人に比べて、やせ菌が減ってデブ菌や悪玉菌が増えていることがわかりました。
(参考文献:「Physiol Genomics」の図を一部編集)
この図に出てくる、「やせ菌」「デブ菌」「アクチノバクテリア」「悪玉菌」の特徴をまとめておきます。
特徴 | 正式名称 | |
やせ菌 | 特徴やせている人に多い菌 | 正式名称バクテロイデス |
デブ菌 | 特徴太っている人に多い菌 | 正式名称ファーミキューテス |
アクチノバクテリア | 特徴ビフィズス菌が含まれるグループ。 ビフィズス菌以外にもさまざまな菌が含まれる。 | 正式名称アクチノバクテリア |
悪玉菌 | 特徴体に悪い菌 | 正式名称プロテオバクテリア |
便秘の人ではやせ菌が減って、デブ菌・アクチノバクテリア・悪玉菌が増えています。やせ菌が減ってデブ菌や悪玉菌が増えているので、腸内環境は悪化していることが読み取れます。(※アクチノバクテリアについては後述します)
また、この論文では、デブ菌の中でも特に「糖尿病と関係のある菌が増えている」と書かれていました。便秘だからといって必ずしも糖尿病になるわけではありませんが、糖尿病に関係する悪玉菌が増えているのは気になるところです。
このように、便秘の人では便秘でない人に比べて、腸内環境は確実に悪くなっているのです。
2.便秘になるとビフィズス菌が激減する
ここまでの説明で、「便秘の人の腸内環境は悪くなっている」ということがわかったと思います。
ただ、なかには「アクチノバクテリア」が気になる人がいると思います。上の表に書いたとおり、アクチノバクテリアにはビフィズス菌(善玉菌)が含まれます。そのため、「便秘の人でもビフィズス菌が増えているのではないか?」「善玉菌が増えているのだから別に問題ないのでは?」と思うかもしれません。
ただ結論を言うと、アクチノバクテリアは増えていてもビフィズス菌は増えていません。アクチノバクテリアに属するビフィズス菌以外の菌が増えているだけなのです。(アクチノバクテリアというグループにはビフィズス菌以外の菌もたくさん含まれています)
具体的には、ビフィズス菌は約1/4に減っています。このことは、別の学術論文ですでに発表されていました。(参考文献:J Neurogastroenterol Motil)
ビフィズス菌はお腹の中でもっとも代表的な善玉菌です。その善玉菌が1/4に減っていることからも腸内環境が確実に悪くなっていることがわかります。
以上をまとめると、便秘の人では「やせ菌が減っている」「デブ菌と悪玉菌が増えている」「ビフィズス菌が1/4に減っている」という変化があります。そのため、腸内環境は間違いなく悪化しているのです。
3.まとめ
- 便秘の人のお腹の中では、「やせ菌の減少」「デブ菌や悪玉菌の増加」「ビフィズス菌の減少」などの変化が認められる。
- 便秘の人はそうでない人に比べて確実に腸内環境が悪化している。
したがって、便秘はなるべく早く解消するようにしましょう。
便秘を解消するためには、食事や生活習慣を改善することが大切です。そのためのヒントはこのHPや下記のLINEで発信しているので、ぜひ学び取って普段の生活に役立ててみてください。