便意を我慢してしまう人に多い「直腸・肛門型の便秘」

便秘に悩む人はたくさんいます。実際、働く女性の半数以上が便秘を自覚しているというアンケート結果もあります。また、男性でも便秘になることはあります。私自身、もともと便秘体質のためか、腸内環境に良い食事を心がけていても便秘になることがあります。

便秘を放置してしまうと、体に悪影響を及ぼします。なぜなら、腸管内でインドールやアンモニアといった腐敗物質が作られ続けることになるからです。これらの腐敗物質は血液中に移行して全身をかけ巡るため、肌荒れや疲労感の原因になります。

さらに、動脈硬化や大腸がんなどの重篤な疾患に繋がる可能性もあります。そのため、便秘は適切に対処して解消しておく必要があります。

便秘には、「腸のぜん動不全型」「直腸・肛門型」「ストレス型」という3つのタイプがあります。自分がどのタイプの便秘か把握できれば、それに応じた適切な対応が可能となります。

そこで今回は、「直腸・肛門型」の便秘について述べていきますので、参考にしてみてください。

※ 直腸とは大腸の一番うしろ、つまり肛門直前の部分を指します。

直腸・肛門型便秘の特徴

このタイプの便秘は直腸性便秘とも呼ばれ、特に便意を我慢してしまう人に多いです。例えば、朝、便意を感じても時間がないためにそのまま外出する人や、学校や職場では恥ずかしくて排便できないという人です。

健康な人の場合、便が直腸まで到達すると肛門括約筋(こうもんかつやくきん:肛門にある筋肉)から脳に信号が送られます。その信号を脳が受け取ることによって便意を生じます。そのため、便意を我慢することは体のメカニズムに逆らう行為になります。

頻繁に便意を我慢していると、いずれ直腸と脳との連携がうまくいかなくなってしまい、最終的には便意すら感じなくなってしまいます。これが直腸性便秘です。

また、加齢による腹筋や肛門括約筋の筋力低下や、痔による痛みなども原因となります。

直腸性便秘の特徴としては、「便意を生じないため排便が週に二回以下」「ウォシュレットで肛門を刺激しないと出ない」「排便後もすっきりしない」「排便時に痛みを感じる」などが挙げられます。

また、女性の場合は「直腸瘤(ちょくちょうりゅう)」という病気に繋がる可能性もあります。これは直腸と膣の間にポケットができてしまう病気です。そして、そこに便が溜まってしまうため、排便しても強い残便感を感じる要因となります。重症の場合は手術が必要となるため注意してください。

直腸性便秘には、「肛門括約筋を鍛える運動」と「食生活の改善」が有効です。以下に、具体的な内容を記載しますので、参考にしてみてください。

直腸・肛門型便秘の対策①: 肛門括約筋を鍛える運動

直腸性便秘は肛門括約筋の機能低下が原因です。そのため、肛門括約筋を鍛えるような運動が効果的です。そこで、椅子を使ったトレーニング方法を二つ紹介します。

・椅子の背もたれを使った運動
1. 足を開いた状態で椅子の背もたれなどを持って立つ
2. そのまま深くしゃがむ。このとき、かかとは床に着けたままのほうが良い(難しければ、浮かせても構いません)
3. その状態で左右にゆっくりと腰をひねる

・椅子に座ったまま行う運動
1. 椅子に座ったまま上体を軽く前に倒す。このとき、肘は太ももの上に乗せる
2. 体をゆっくり左右にひねる

いずの場合も、肛門に刺激が加わっていることを意識したほうが効果的です。体が硬い人は無理をせずに、できる範囲でやってみましょう。

直腸・肛門型便秘の対策②: 食生活の改善

食生活の改善は、直腸・肛門型に限らず、全てのタイプに対して有効です。ただ、直腸・肛門型の場合は、便が直腸付近でカチカチに固まっている可能性があります。そのため、まずはこれを柔らかくする必要があります。

これには水溶性食物繊維という種類の食物繊維が有効です。

水溶性食物繊維とは、水に溶けてドロドロになる食物繊維のことです。オクラや長芋などのネバネバした野菜、海藻、フルーツ、こんにゃくなどに多く含まれます。

この水溶性食物繊維を摂取することを意識した上で、以下に示した「腸内環境に良い食品」を食事に取り入れるようにしましょう。

① 不溶性食物繊維
水に溶けない食物繊維のことで、腸のぜん動運動(食べた物を肛門方向へ移動させる収縮運動)を促進します。野菜、穀物、豆類などに多く含まれます。

② 善玉菌
ビフィズス菌や乳酸菌のことで、腸内で酢酸や酪酸など体に良い成分を作ります。ヨーグルト、納豆、漬物などの発酵食品に多く含まれます。

③ オリゴ糖
ビフィズス菌など善玉菌のエサになります。フルーツ(バナナ、りんごなど)、野菜(タマネギ、ゴボウなど)、ハチミツ、大豆などに多く含まれます。

ここに示した対策については、少なくとも一週間は続けてみてください。すぐに効果が出なくても諦めずに、継続して行うことが重要です。

今回述べてきたように、便秘には3つのタイプがあります。そのうちの一つである直腸・肛門型は、便意を我慢してしまう人に多い便秘です。このタイプの便秘には、「肛門括約筋を鍛える運動」と「食生活の改善」などが有効です。今回、具体的な対策を記載していますので、便秘解消の参考にしてみてください。



無料動画セミナーのご案内