意外とあいまいな便秘の定義

普段なにげなく使う「便秘」という言葉ですが、実は「便秘」の定義はあいまいです。学会によって定義が異なっていたり、専門家によって主張が違っていたりするため、明確な定義が決まっていないのです。

そこで今回は、日本の専門家の間で主に使われている「便秘の定義」について紹介します。また定義があいまいな中で、どのようにして便秘か否かを判断すればよいか述べていきます。また最後に、注意すべき便秘の種類についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

日本内科学会、日本消化器病学会、ローマ委員会による便秘の定義

まずは、さまざまな学会ごとの定義を紹介します。

日本内科学会の定義
『3日以上排便がない状態、または排便があっても残便感がある状態』

日本内科学会では、「3日間排便がなければ便秘」と定義されています。これは明確でわかりやすいです。ただこれだけではなく、「毎日排便があったとしても、排便後にすっきりした感覚が得られない(=残便感がある)」という状態も便秘と考えることができます。この場合、便秘かどうかは本人の主観的な判断によって決まります。

日本消化器病学会の定義
『排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔が不規則で便の水分量が低下している状態』
『明確な定義があるわけではありません』

日本内科学会と比べるとあいまいな定義です。排便頻度には個人差があるため、結局は本人が便秘かどうか判断する必要があります。

なお日本消化器病学会によると、たとえ排便頻度が3~4日に1回であったとしても、それが長年の排便習慣で、まったく苦痛がなければ便秘と考えなくても構わないことになっています。

ローマ委員会の定義
ローマ委員会とは、国際的に著名な消化器専門家らによって1996年に作られた委員会です。2006年8月には「RomeⅢ」という1000ページ以上の専門書が刊行されており、さまざまな疾患の診断基準が細かく記載されています。

RomeⅢによる便秘の定義は少し複雑ですが、簡単に要約すると下記のようになります。

『排便が週に3回未満で、排便困難を伴う』

排便頻度は比較的明確ですが、排便困難かどうかは本人しかわからないため、結局本人が主観的に判断するしかありません。

以上のように、便秘の定義は学会などによって異なります。日本内科学会のように排便頻度だけで定義する場合もありますが、排便頻度には個人差もあることから、基本的には残便感などから本人が主観的に判断することになります。

そして、本人が判断する際のポイントは「排便時にいきまないと出ない(=排便困難を伴う)」「排便後もすっきりしない(=残便感がある)」の二点になります。

この二点のうちいずれにも該当しなければ、たとえ排便頻度が3日に一回であっても問題ありません。逆に毎日排便していたとしても、どちらかに該当するようであれば便秘と考えられます。


 

注意が必要な便秘

排便頻度に個人差があると言っても、あまりに少ないのは問題です。一般的には「一週間以上排便がなければ医療機関を受診すべき」といわれていますので、一週間を超えて排便がない場合は注意してください。

また、便秘の背景に何らかの疾患が隠れている場合もあります。例えば、ポリープやがん、腸炎などが原因で便秘になることがあります。そのため、便の色は必ずチェックし、血液が混ざっていないか確認するようにしてください。

赤い鮮血は出口に近い部分での出血を意味しているので、痔である可能性が高いです。一方、便がタールのように真っ黒の場合は、出口付近ではなく腸の内部で出血していることを示しています。がんや腸炎の可能性もあるので、医療機関で検査を受けたほうが良いでしょう。

またパーキンソン病に罹患している場合も便秘になることがあります。ただ、便秘だけでパーキンソン病と決めつけるわけにはいきません。そのため、「手足が震える」「転びやすくなった」など他にも気になる症状がある場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

今回述べてきたように、便秘には明確な定義がないため、便秘かどうかは基本的には自分で判断することになります。その際のポイントは「排便時にいきまないと出ない(排便困難)」「排便後もすっきりしない(残便感がある)」の二点です。ただ、便秘の背景には何らかの病気が隠れている場合もあるため、その点は注意するようにしてください。



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