さまざまな乳酸菌の特徴と健康への影響

腸内環境を整えるためには「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を意識して、両方を摂取することが重要です。

プロバイオティクスとは、簡単にいうと「善玉菌」のことです。代表的なプロバイオティクスは、ヨーグルトや発酵食品に含まれる乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などです。

一方、プレバイオティクスとは「善玉菌のエサ」のことです。代表的なプレバイオティクスは、野菜、果物、海藻などに含まれる食物繊維やオリゴ糖などです。

ここでは、プロバイオティクスの中でも特に乳酸菌に着目し、さまざまな乳酸菌の特徴や生理作用(体に与える影響)についてまとめていきます。あなたがいつも摂取している乳酸菌にどのような性質があるか理解しておきましょう。

人の腸内にいる乳酸菌の特徴

まず、乳酸菌に共通する性質について整理しておきます。

乳酸菌の定義
ブドウ糖などの糖類をエサにして、主に乳酸を作る菌を総称して乳酸菌といいます。ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)という種類に分類される細菌が主要な乳酸菌になります。

※ 「属」とは細菌を分類する単位のことです。

2016年8月現在、400種以上の乳酸菌が見つかっています。動物の体内だけでなく、ヨーグルト、漬け物、味噌、醤油などの発酵製品にも含まれます。なお、ヨーグルトなどの乳製品に含まれる乳酸菌は「動物性乳酸菌」、漬け物などの乳製品以外の発酵食品に含まれる乳酸菌は「植物性乳酸菌」と呼ばれます。

乳酸菌は通性嫌気性
乳酸菌は酸素があってもなくても生育することができます。このような細菌のことを通性嫌気性菌(つうせいけんきせいきん)といいます。

意外かもしれませんが、酸素があると生育できない細菌はたくさんいます。実際、腸内細菌の9割以上は酸素に触れると死んでしまいます。

乳酸菌は通性嫌気性菌であるため、「酸素のある小腸」と「酸素のない大腸」の両方で生育することができます。ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌は主に大腸に存在するため、乳酸菌は「小腸に生息できる貴重な善玉菌」といえます。

腸に存在する乳酸菌の数
便通異常がない場合、1グラムの便に含まれる乳酸菌は約1000万個です。これはあまり多い値ではありません。善玉菌の代表格であるビフィズス菌の場合は、便1グラムあたり約100億個も含まれています。つまり、乳酸菌はビフィズス菌の約1/1000の数になります。

ただ、この数値は2000年以前の研究で得られたデータに基づいて算出されています。2000年以降になると「腸内細菌の遺伝子解析技術」が発展し、より詳細な解析が可能となりました。

その結果、乳酸菌はビフィズス菌よりも多い可能性があることが分かってきました。2016年8月の段階では、「乳酸菌はビフィズス菌の2倍存在する」という研究結果が報告されています。

乳酸菌が産生する物質
乳酸菌は、ブドウ糖などの糖類をエサにして大量の乳酸を産生します。また酢酸ギ酸という物質を作る場合もあります。

これらは全て「酸」であるため、たくさん作られると腸内が酸性になります。酸性条件下では、大腸菌やクロストリジウムなどの悪玉菌の増殖が抑制されるため、腸内環境はさらに良くなります。

乳酸菌ごとの特徴

ここまでは乳酸菌に共通する性質を述べてきました。ここからは、個別の乳酸菌ごとの性質をまとめていきます。

ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)
  • 通称:カゼイ菌
  • 小腸の運動や消化・吸収を助ける働きがあります。
  • ヤクルトに含まれる乳酸菌シロタ株、某乳製品メーカーのヨーグルトに含まれるKW乳酸菌は、いずれもカゼイ菌に該当します。このように、カゼイ菌は乳製品メーカーにとって非常に重要な乳酸菌といえます。

<管理人コメント>
私自身は「糖分が多い」という理由から、ヤクルトをほとんど飲みません。ただ、私の友人は気にせず飲んでいます。その彼が過去に興味深い経験をしています。

彼は長年下痢で悩んでいましたが、たまたま「抗生物質服用後に、ヤクルトを飲む」という生活を数日続けたことで、下痢の症状が改善したそうです。

下痢の原因や体質などの影響もあるため、下痢に悩む人全員に効果があるとは言いきれません。ただ、腸内細菌研究者である彼が経験した「ヤクルトの効果」は、それなりに説得力のあるものでした。

ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)
  • 通称:ガセリ菌
  • 人の腸内に定着している代表的な乳酸菌の一種です。
  • 他の乳酸菌に比べて、胃酸に強いという特徴があります。また、ピロリ菌(胃がんの原因となる細菌)の増殖を抑制する働きがあります。

<管理人コメント>
某大手乳製品メーカーのヨーグルトのパッケージには大きな文字で「LG21」と記載されています。この商品には、ラクトバチルス・ガセリ LG21(LG21乳酸菌)が入っているのです。

この商品はピロリ菌除菌効果が高いことをアピールした販売戦略がとられています。実際、このヨーグルトを摂取することでピロリ菌が減少し、傷ついた胃粘膜も修復することが、実験によって証明されています。

この実験結果は、2001年に「Journal of Antimicrobial Chemotherapy」という科学雑誌に掲載されました。この論文では、8週間の継続的な摂取により、ピロリ菌が除菌されることが示されています。ピロリ菌が気になる方は、約2か月間継続的に摂取するのが良いでしょう。

ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)
  • 通称:アシドフィルス菌
  • 代表的な善玉菌の一種で、腸内でアトピー予防や発毛に関わる「ビオチン」という物質を産生します。
  • 某整腸剤にはこの乳酸菌が含まれています。このことからも、整腸作用の強い乳酸菌であることがわかります。
  • 某大手乳製品メーカーでは、L-92乳酸菌というアシドフィルス菌を開発しています。このL-92乳酸菌には、花粉症やアトピー性皮膚炎の症状を緩和する働きがあることが示されています。

<管理人コメント>
L-92乳酸菌は、生きたまま腸に届かなくても構いません。実際、L-92乳酸菌は殺菌された状態で乳製品に含まれています。たとえ死んだ菌であっても、乳酸菌の菌体成分が腸内のビフィズス菌などのエサとなるため、腸内環境は改善します。

また1970年頃までは、「善玉菌=アシドフィルス菌」と考えられていたほど、この細菌が広く認知されていました。上述のヤクルトに含まれる乳酸菌シロタ株に関しても、1970年頃まではアシドフィルス菌と間違えて表示されていたというエピソードがあるほどです。

ラクトバチルス・ラムノーザス(Lactobacillus rhamnosus)
  • 通称:ラムノーザス菌
  • 胃酸などの消化液に強く、生きたまま大腸まで届きます。
  • LGG乳酸菌としてサプリメントが開発されています。またLGG乳酸菌を含む数多くの乳製品が市販されています。

<管理人コメント>
2001年に「アトピーの予防効果がある」ことが実験で証明されて以降、注目されるようになった乳酸菌です。健康への影響について精力的に研究されており、2016年現在、900報以上の論文が科学雑誌に投稿されています。

ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
  • 通称:ラブレ菌
  • 京都のすぐき漬け(カブの一種の漬け物)から発見された植物性の乳酸菌です。免疫力をアップさせ、インフルエンザ感染予防効果があることが知られています。

<管理人コメント>
他の植物性乳酸菌と同じように、生きたまま腸まで届きます。そのことをアピールしたさまざまな種類のサプリメントが市販されています。

複数のサプリメントが売られているため、どれが良いか悩む場合は「ラブレ菌以外の善玉菌も含まれているもの」を選ぶと良いでしょう。そうすることで、バランスよく善玉菌を腸に届けることができます。

エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)
  • 通称:フェカリス菌
  • 免疫力の向上、花粉症などのアレルギー症状を軽減する効果があります。
  • 乳酸菌EC-12という乳酸菌がサプリメントとして開発されています。この乳酸菌は「他の乳酸菌に比べて菌体のサイズが小さい」という特徴があります。そのため、他の乳酸菌サプリメントと比較して、サプリメント一粒あたりに含まれる乳酸菌の数が2~500倍もあります。

<管理人コメント>
スーパーやコンビニで見かける「乳酸菌入りゼリー」などのお菓子には、このフェカリス菌が含まれることが多いです。花粉症の症状軽減効果があるため、我が家でもフェカリス菌が含まれる「乳酸菌入りゼリー」をよく購入して食べています。

ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)
  • 通称:ブルガリア菌
  • ヨーグルトの製造によく使われる乳酸菌です。発酵の過程でアミノ酸やペプチドを産生し、同じくヨーグルト製造に用いられるサーモフィルス菌という乳酸菌を増殖させます。

ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)
  • 通称:サーモフィルス菌
  • ヨーグルトの製造によく使われる乳酸菌です。発酵の過程でギ酸を産生し、同じくヨーグルト製造に用いられるブルガリア菌を増殖させます。

<管理人コメント>
ブルガリア菌とサーモフィルス菌はお互いに「相手のエサ」を作りながら増殖します。ヨーグルトを生産する場合は、これらの細菌を両方加えることで、効率的に発酵させることができます。

このように、乳酸菌といってもさまざまな種類がいます。そしてそれらは基本的に「すべて腸内環境に良い」と考えて構いません。また現在でも乳酸菌に関する研究は進められており、今後さらなる効果が付け加えられる可能性があります。

便秘や肌荒れなどで悩んでいる人は腸内環境が悪化している可能性があるため、積極的に乳酸菌を摂取して腸内環境を整えましょう。



無料動画セミナーのご案内