脂肪をたくさん摂取すると乳酸菌が腸に定着しにくくなる

腸内環境を改善するポイントは、日々の食事にプロバイオティクスとプレバイオティクスを取り入れることです。

プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のことです。ヨーグルトや漬け物などの発酵食品に多く含まれています。

一方、プレバイオティクスは「善玉菌のエサ」のことです。野菜、果物、海藻などに含まれる食物繊維やオリゴ糖が該当します。

プロバイオティクスとプレバイオティクスをバランスよく摂取することが腸内環境を整える上で重要ですが、注意点もあります。腸内環境に悪影響を与える食べ物(脂肪分の多い食べ物)を同時に食べていると、これらの効果は半減してしまうのです。

そこで今回は、「善玉菌の腸への定着」という観点から、食事の影響について解説していきます。腸内環境が気になる方は、食生活を見直して腸内環境を整えるためのヒントにしてみてください。

摂取した善玉菌が腸に滞在する時間

サプリメントや食品から摂取した善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)が腸に滞在する時間は意外と短いです。摂取したほとんどの善玉菌は数日~数週間以内に便として排泄されてしまいます。

例えば、今回紹介する「プランタラム乳酸菌」の場合、摂取して3日以内にほぼすべて排泄されてしまいます。

※ プランタラム乳酸菌:ダイエット効果や免疫力を高める効果がある乳酸菌。正式名称はラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)。

また、腸内細菌を扱う某ベンチャー企業の社長とお話ししたときは、「摂取したビフィズス菌は約2週間以内にすべて排泄される」とおっしゃっていました。さらに、腸内細菌に関する国際学会では、「滞在時間は長くても4週間」と発表されていました。

このように、摂取した善玉菌が私たちのお腹に永遠に定着することはありません。

ただ、せっかく摂り入れた善玉菌なので、できれば長時間体内にいて良い働きをしてほしいものです。そこで重要なのが普段の食事です。なぜなら、「善玉菌の滞在時間」は、一緒に体内に摂り入れる栄養素の影響を受けるからです。

具体的には、脂肪をたくさん摂取すると善玉菌の滞在時間は短くなります。このことについて以下に解説していきます。

脂肪をたくさん摂取すると善玉菌はすぐに体内からいなくなる

脂肪の摂取量と善玉菌の腸への定着に関して研究した例があります。その研究では、マウスを2つのグループに分けて、以下のような餌を与えました。

グループ①:普通の餌+プランタラム乳酸菌
グループ②:脂肪をたくさん含む餌+プランタラム乳酸菌

これらの餌を食べさせた後、排泄された便の中に含まれるプランタラム乳酸菌の数をかぞえました。

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グラフからわかるとおり、普通の餌を食べたグループ①では食後48時間までは便の中に乳酸菌が検出されました。言い換えると、48時間以上経過すると、プランタラム乳酸菌が腸からほぼいなくなったということです。

一方、高脂肪食を食べたグループ②の場合、24時間後の時点でプランタラム乳酸菌がほとんど検出されなくなっていました。つまり、脂肪をたくさん摂取すると、プランタラム乳酸菌はすぐに体内からいなくなってしまうのです。

このように、脂肪の摂取量は、善玉菌が腸管内に滞在する時間に影響します。

この理由はほぼ解明されています。脂肪をたくさん摂取した場合、脂肪を消化・吸収するために胆汁酸という消化液が十二指腸に分泌されます。

この胆汁酸には殺菌作用があるため、一部の腸内細菌を殺してしまうのです。プランタラム乳酸菌も例外ではありません。

つまり、「脂肪をたくさん摂取 → 胆汁酸が多く分泌される → 一部の腸内細菌が殺菌される」という流れで、プランタラム乳酸菌の数が減っていたのです。

ここまで述べてきたように、善玉菌を摂取したからといって、それらが永遠に体内に定着するということはありません。そのため腸内環境を健全に保つためには、善玉菌を継続的に摂り入れることが重要です。

また、脂肪の摂取量が多いと善玉菌の効果を打ち消してしまう可能性があります。もちろん胆汁酸で死なない善玉菌もいますし、世の中で売られているサプリメントのほとんどは、善玉菌が生きたまま腸まで届くような工夫が施されています。

ただ、善玉菌に十分活躍してもらうためには、胆汁酸の分泌量が少ないほうが良いです。そのため、普段の食事では脂肪の摂りすぎに注意するよう心がけることが重要です。




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