β-グルカンによる「満腹感の維持」が肥満解消に役立つ

大麦には、肥満予防やダイエットに有効な「β-グルカン」と呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれています。

大麦のβ-グルカンは、「血糖値の上昇抑制」と「満腹感の維持」という二つの作用を介してダイエット効果を示すことが証明されています。特に、「満腹感の維持」に関しては、腸内細菌が関与しています。そのため、大麦は生活習慣病に関心のある腸内細菌研究者に大変注目されている食材です。

ここでは、「満腹感の維持」に着目して、β-グルカンのダイエット効果について解説していきます。また、β-グルカンを利用したダイエットを行う際の注意点についても述べていきます。あなたも普段の食事に大麦を取り入れて、手軽にダイエットを行ってみましょう。

※ 大麦は麦ごはんに使用される「押し麦」や「もち麦」という名称で市販されています。いずれもご飯に混ぜて炊くだけで食べられるので、普段の食事に取り入れやすい食材です。

β-グルカンは満腹感を持続させることで食欲を抑える

満腹感を持続できる食材があれば、より効果的にダイエットを行えます。そして、β-グルカンを豊富に含む大麦はまさにそのような食材といえます。

実際、食品の機能性評価事業を進めている日本健康・栄養食品協会は、大麦β-グルカンの「満腹感の維持作用」について、「肯定的な根拠がある」と認めています。

ここでは、日本健康・栄養食品協会が認めた根拠となる研究内容について紹介します。

(参考文献:Mol Nutr Food Res, 2011, 55, 1118)

<試験の内容>
  • 48匹のマウスに脂肪をたくさん摂取させて太らせました。
  • 48匹を12匹ずつ4つのグループ(A, B, C, D)に分けました。
  • グループA:餌にβ-グルカンを少し混ぜました(β-グルカン含有量 0.7%)
  • グループB:餌にβ-グルカンを混ぜました(β-グルカン含有量 3.5%)
  • グループC:餌にβ-グルカンをたくさん混ぜました(β-グルカン含有量 7%)
  • グループD:餌にβ-グルカンは混ぜませんでした
  • 6週間食べ続けた後、脳内の食欲ホルモンの量を測定しました。

6週間後、各グループの食欲ホルモンの量は、以下のグラフのようになりました。
腸,腸内細菌,腸内環境,健康

このグラフから、β-グルカンをたくさん混ぜたグループCでは、他のグループより食欲ホルモンの量が減っていることがわかります。つまり、β-グルカンには食欲を抑える働きがあるのです。

効果のあったグループCでは、餌にβ-グルカンを7%混ぜています。私たちの食事に置き換えて考えると、白米:もち麦=1:3の割合で混ぜたご飯が7%のβ-グルカンに相当します。

※ 上述の通り、もち麦はβ-グルカンを豊富に含む大麦の一種です。
※ もち麦には100グラムあたり約9グラムのβ-グルカンが含まれています。

白米:もち麦=1:3だと、もち麦の量が多いため少し食べにくいかもしれません。その場合はもち麦だけに頼らず、β-グルカンが豊富な他の食材(シリアルなど)やサプリメントなども利用すると良いでしょう。

消化管ホルモン「GLP-1」が食欲を抑えてくれる

なぜβ-グルカンに「満腹感の維持作用」があるのか疑問に思う方もいると思います。ここではそのメカニズムについて解説していきます。

β-グルカンは腸内の善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など)のエサになります。そして、これらの善玉菌は酢酸、プロピオン酸、酪酸などの体に有益な成分を作ってくれます。これらの成分は総称して「短鎖脂肪酸」と呼ばれます。

短鎖脂肪酸にはさまざまな役割があります。そのうちの一つが消化管ホルモン「GLP-1」の分泌促進です。

あまり聞き慣れない単語だと思いますが、GLP-1は私たちの健康にとって大変重要なホルモンです。GLP-1には、以下のような働きがあります。

① 満腹中枢に働きかけて、食欲を抑える
② 胃に働きかけて、食べ物が胃で滞留する時間を延ばす(胃排泄抑制といいます)
③ 血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促す
④ 血糖値を上げるホルモンである「グルカゴン」の分泌を抑制する

GLP-1には、①や②のような働きがあるため、満腹感を維持できるのです。なお、③と④は血糖値の調節に重要な作用です。

このように、「β-グルカンの摂取 → 善玉菌がβ-グルカンから短鎖脂肪酸を産生 → 短鎖脂肪酸がGLP-1の分泌を促進 → GLP-1が満腹感を維持」という流れで、食欲が抑えられるのです。


β-グルカンによるダイエットを行う際の注意点

β-グルカンを利用してダイエットを行う場合、食事で血糖値を上げすぎないように注意する必要があります。

③ に示した通り、GLP-1はインスリンの分泌を促します。インスリンは血糖をグリコーゲンや中性脂肪に変換するホルモンです。そのため、血糖値を上げすぎてしまうと、インスリンの働きで中性脂肪が蓄積されてしまうのです。

GLP-1は血糖値に応じてインスリン分泌を促します。そのため、食後血糖値が高いと多くのインスリンが分泌され、血糖値が低いとインスリンは分泌されません。

β-グルカンの作用でGLP-1がたくさん作られ、満腹感を維持できたとしても、食後血糖値が高ければ意味がありません。そのため、急激に血糖値を上昇させる食べ物(あんパンやチョコレートなど)は極力避けたほうがよいです。

※ 冒頭に記載した通り、β-グルカンには血糖値の上昇を抑制する働きがありますが、あくまで血糖値を上がりにくくするだけです。β-グルカンを摂取したとしても、あんパンなどを食べてしまうとやはり血糖値は上昇します。


ここまで述べてきたように、β-グルカンは消化管ホルモンであるGLP-1を介して食欲を抑えてくれます。ただ、GLP-1には血糖値に応じてインスリンを分泌する作用もあります。インスリンは血糖を中性脂肪などに変換してしまうため、β-グルカンを摂取する場合でも、血糖値の急上昇に繋がるような食事は避けるようにしましょう。



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