腸内細菌は脂肪細胞に影響を与えて体重を変化させる

脂肪細胞と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか? おそらく「太っている人に多い細胞」や「肥満の原因となる細胞」と思われる方が多いでしょう。

もちろんその答えは正しいです。そのような肥満の原因となる脂肪細胞は「白色脂肪細胞」と呼ばれます。

しかし、脂肪細胞の中には全く逆の作用をする細胞もあります。つまり、脂肪を燃焼する脂肪細胞も存在するのです。このような肥満解消に役立つ細胞は「褐色脂肪細胞」や「ベージュ脂肪細胞」と呼ばれます。

効果的にダイエットを行うためには、白色脂肪細胞を減らし、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を増やすことが重要です。

そして腸内細菌がこれらの脂肪細胞に影響を与えることがわかってきました。そこで今回は、「脂肪細胞の役割」と「腸内細菌による脂肪細胞を介した体重減少効果」について解説していきます。腸内環境の改善がなぜ肥満解消に繋がるのかしっかり理解しましょう。

脂肪細胞の種類と特徴:白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、ベージュ脂肪細胞

脂肪細胞は「白色脂肪細胞」「褐色脂肪細胞」「ベージュ脂肪細胞」の3種類に分けられます。これらの細胞について簡単に解説します。

白色脂肪細胞
日常生活で消費しきれなかったエネルギーを中性脂肪として蓄える脂肪細胞です。主に皮下脂肪や内臓脂肪として存在するため、太っている人に多い細胞です。

運動や飢餓などが原因で体がエネルギー不足になると、白色脂肪細胞に蓄えられている中性脂肪が分解され、エネルギー源として使用されます。

褐色脂肪細胞
飢餓や運動に関係なく、エネルギーを消費して体温保持に役立つ細胞です。

小児期に多く、成長とともに減少するという特徴があります。成人期以降では、肩甲骨周辺に残っている程度になります。赤ちゃんの体温が大人よりも高いのは、褐色脂肪細胞が多いためです。

また欧米人は私たち日本人よりも褐色脂肪細胞が多いといわれています。寒い時期でも半袖短パンの外国人を見かけるのはこのためです。さらに熊などの冬眠する動物にも褐色脂肪細胞は多いです。褐色脂肪細胞の働きにより、冬眠中の体温低下を防いでいるのです。

ベージュ脂肪細胞
褐色脂肪細胞と同じく、エネルギーを消費して体温保持に役立つ細胞です。冷気に長時間さらされたり運動したりすると、白色脂肪細胞がベージュ脂肪細胞に変化することが知られています。

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このように、脂肪細胞には3種類あります。そして、ダイエットのためには「白色脂肪細胞を減らし、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を増やすこと」が有効であることを理解しておきましょう。

腸内細菌は脂肪細胞に影響を与える

さまざまな研究により、腸内細菌が脂肪細胞に影響を与えて体重の増減に関与していることがわかってきました。ここでは2つの研究成果を簡単にまとめます。

腸内細菌を減らすとベージュ脂肪細胞が増えて痩せる
「腸内細菌を減らすとベージュ脂肪細胞が増えて痩せる」という研究成果があります。この研究成果は2015年に一流科学雑誌「Nature medicine」に掲載されました。

この研究では、抗生物質を飲ませたマウスや、元々腸内細菌のいない無菌マウスが使われました。

※ 抗生物質:細菌を殺す薬です。抗生物質を飲むと腸内細菌の多くが死にます。
※ 無菌マウス:体のどこにも細菌がいないマウスです。当然、腸内細菌もいません。

抗生物質を飲んだマウスや無菌マウスでは、白色脂肪細胞が減少し、ベージュ脂肪細胞が増加しました。そして、普通のマウスに比較して体重が減りました。つまり、腸内細菌を減らすことによって、脂肪細胞が変化して痩せやすくなったのです。

ただ、私たちの日常生活において、痩せるために腸内細菌を減らすことはほぼ不可能です。もちろん、この論文のように抗生物質を飲むことで腸内細菌を減らすことはできます。しかし、そのような目的で抗生物質を飲むことは認められていませんし、医師から処方されることもありません。

さらに病気の予防という観点で考えると、腸内細菌は減らすよりも増やしたほうが良いです。腸内細菌の種類が少ないとさまざまな病気にかかりやすいからです。

それでは、腸内細菌を減らさずにダイエット効果を得るにはどうすればよいでしょうか? 答えは「善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)の力を借りる」ことです。以下に、善玉菌のダイエット効果を示した研究を紹介します。

白色脂肪細胞を減少させてダイエット効果を示す乳酸菌
「ある乳酸菌が白色脂肪細胞を減少させてダイエット効果を示す」という研究成果が得られています。この研究成果は2010年に科学雑誌「Experimental Biology and Medicine」に掲載されました。

この研究では、脂肪をたくさん含む餌(高脂肪食といいます)をマウスに与えました。高脂肪食を食べたマウスは当然太ります。

高脂肪食を食べているマウスに、プランタラム乳酸菌(Lactobacillus plantarum No.14)を食べさせました。すると、白色脂肪組織が小さくなり体重が減少しました。つまり、乳酸菌を摂取することで、高脂肪食に伴う肥満をある程度抑えることができたのです。

このプランタラム乳酸菌によるダイエット効果は人でも検証されています。そして、この乳酸菌を3週間摂取し続けることで、体脂肪率が低下することが証明されているのです。

ここまで述べてきたように、効果的にダイエットを行うためには、白色脂肪細胞を減らして、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を増やすことが有効です。そして、善玉菌であるプランタラム乳酸菌は、脂肪細胞に影響を与えてダイエット効果を示します。

プランタラム乳酸菌は漬物やキムチなどの発酵食品に多く含まれる乳酸菌です。またこの乳酸菌を含むサプリメントも市販されています。腸内環境を整えてダイエットを行いたい方は、このような食品やサプリメントを摂取することを心がけてください。



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