健康診断などで、「中性脂肪が高い」「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い」のような結果が出た場合は、動脈硬化を予防するための対策を行ったほうが良いです。
なぜなら動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気の原因となるからです。健康で長生きするためにも、動脈硬化を予防することはとても大切なのです。
実は、動脈硬化には腸内細菌が関係しています。このことに驚く人も多いのですが、これは科学的に証明された事実です。腸内細菌が動脈硬化の原因となる物質を作っていることが証明されているのです。
そこで今回は、腸内細菌と動脈硬化との関係について解説していきます。また、動脈硬化を予防するためのポイントについても述べていきます。中性脂肪やLDLコレステロールが高い方はぜひ参考にしてみて下さい。
腸内細菌が作る動脈硬化の原因物質「トリメチルアミンオキシド」
タンパク質をたくさん摂取する生活を続けていると動脈硬化になりやすいといわれています。この理由は、腸内細菌が肉(特に赤身の肉)や卵に含まれる栄養素から、動脈硬化の原因物質を作っているためです。詳しい内容を以下に記載します。
- 赤身肉には「カルニチン」、卵や牛乳には「コリン」という物質が多く含まれています。
- ある種の悪玉菌は、これらの物質を原料にして「トリメチルアミン」という物質を作ります。
- 腸内で作られたトリメチルアミンは腸壁から血管へ吸収されます。
- 吸収されたトリメチルアミンは血管を通って肝臓へ運ばれます。
- 肝臓でトリメチルアミンは「トリメチルアミンオキシド」という物質に変換されます。これが動脈硬化の原因となる物質です。
難しい言葉がいくつか出てきましたが、要は「悪玉菌が赤身の肉や卵から動脈硬化の原因物質を作っている」ということです。
そして、この原因物質(トリメチルアミンオキシド)が作られないようにすることで、動脈硬化を予防できることが示されています。
トリメチルアミンオキシドが作られなければ動脈硬化を予防できる
アメリカのクリーブランドクリニックという医療機関において、「トリメチルアミンを作る悪玉菌の働きを抑える物質」が発見されました。この物質は3,3-ジメチル-1-ブタノール(以下DMBと略します)というアルコールの一種です。そして、このDMBを飲むことで動脈硬化が予防できることも示されました。この研究成果は2015年に超一流科学雑誌「Cell」に掲載されています。
Cellに掲載された論文では「動脈硬化になりやすいマウス」を使って実験が行われました。そして、DMBをマウスに飲ませることで、①トリメチルアミンオキシドが作られないこと、②マウスが動脈硬化にならないこと、が証明されました。
動物実験の結果ではありますが、悪玉菌の働きを抑えることで動脈硬化を予防できることを示した画期的な研究成果でした。
なおDMBは、赤ワイン、オリーブオイル、バルサミコ酢、グレープシードオイルなどに含まれることが確認されています。
動脈硬化を予防するためにできること
動脈硬化を予防するためには、原因物質である「トリメチルアミンオキシド」を作られないようにすることが重要です。そのために私たちができる予防策としては、以下の三つが挙げられます。① 赤身の肉や卵を摂取しすぎない
原料であるカルニチンやコリンを摂取しすぎないようにしましょう。ただ、過度に意識しすぎてストレスとなるのはよくありません。ストレスは腸内環境を悪化させるので、あくまで摂取しすぎないようにしましょう。
② 腸内細菌にトリメチルアミンを作らせない
上述の通り、DMBを飲むことでトリメチルアミンの産生を抑えられます。そのため、DMBを豊富に含む赤ワイン、オリーブオイル、バルサミコ酢、グレープシードオイルの摂取を心がけましょう。
③ トリメチルアミンを作る腸内細菌を増やさない
トリメチルアミンを作る腸内細菌は、ある種の大腸菌やプロテウス属という種類に属する腸内細菌です。いずれも一般的に悪玉菌に分類される細菌です。これらの細菌が腸内で増えすぎないようにすることが重要です。