β-グルカンは血液中のコレステロールを適度に下げる

大麦には、肥満予防やダイエットに有効な「β-グルカン」と呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれています。そして、β-グルカンは「血糖値の上昇抑制」と「満腹感の維持」という二つの作用を介してダイエット効果を示すことが明らかになっています。

またこのようなダイエット効果に関連して、β-グルカンには「血中コレステロールを正常化する(適度に下げる)」という働きもあります。

太っている方や生活習慣病が気になる方の中には、血中コレステロールが高い人もいます。そのような方は、β-グルカンを豊富に含む大麦などを摂取することで、コレステロールを適度に下げることができます。

※ 大麦は麦ごはんに使用される「押し麦」や「もち麦」という名称で市販されています。いずれもご飯に混ぜて炊くだけで簡単に調理できます。

β-グルカンは血液中のLDLコレステロールを下げる

コレステロールには、悪玉コレステロールと呼ばれる「LDLコレステロール」と善玉コレステロールと呼ばれる「HDLコレステロール」があります。

血液中のLDLコレステロール値が高いと、脂質異常症と診断されます。この状態が続くと動脈硬化へと発展し、心筋梗塞や脳卒中などの疾患に繋がる恐れがあります。そのため、血液中のLDLコレステロールは適度に下げる必要があります。

そして、β-グルカンには血液中のLDLコレステロールを下げる作用があることが数多くの研究で明らかにされています。ここでは、その研究の一例を紹介します。

(参考文献:日本食物繊維学会誌, 2011, 15, 6)

<試験の内容>
    • LDLコレステロール値:140~220 mg/dL、BMI:22以上の30~60歳の男性44名を対象としました。

※ BMIは肥満度を示す値です。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算される値で、25以上は肥満です。

    • 44名を22名ずつ2つのグループ(AとB)に分けました。
    • グループA:主食に白米を食べてもらいました。
    • グループB:主食に白米と大麦を混ぜたものを食べてもらいました(白米:大麦=1:1の割合)

  • 12週間食べ続けた後のLDLコレステロール値を比較しました。

試験期間中の血中コレステロールは、以下のグラフのように変化しました。

腸,腸内細菌,腸内環境,健康

グラフを見てわかる通り、白米に大麦を混ぜて食べたグループBでは、血液中のLDLコレステロール値が適度に低くなります。薬ではないため、大きく下げる効果はありませんが、大麦を食べていないグループAよりも低くなっていることが確認できます。

なお、この試験では12週間食べ続けていますが、4週間の時点でLDLコレステロールは下がっていきます。実際、海外の試験でも、1ヶ月間の摂取で効果があることが示されています。

このように、大麦のβ-グルカンを摂取することで血液中のLDLコレステロールを下げることができるのです。

β-グルカンの作用は脂質異常症治療薬である「コレスチミド」に似ている

最後にβ-グルカンがLDLコレステロールを下げる理由について述べていきます。

β-グルカンは、脂質異常症の治療薬であるコレスチミド(製品名:コレバイン)と同じメカニズムで血液中のコレステロールを下げると考えられています。

コレスチミドは、LDLコレステロールが高い患者さんに処方される薬です。この薬には「腸管内でコレステロールを吸着して排泄する」という働きがあります。コレステロールが腸から吸収されなくなるため、血液中のLDLコレステロールが下がるのです。

β-グルカンも同様に、腸管内でコレステロールを吸着する性質があります。そのため、食品や胆汁酸に含まれるコレステロールが吸収されなくなるのです。

※ 胆汁酸:コレステロールを含む消化液のことです。脂肪を消化・吸収するために、肝臓から十二指腸へ分泌されます。通常、十二指腸に分泌された後、小腸から再び吸収されます。

ここまで述べてきたように、β-グルカンには脂質異常症治療薬(コレバイン)と同じく、「腸管内でコレステロールを吸着する」という性質があります。そのため、β-グルカンを摂取することで、血液中のコレステロールを適度に下げることができます。生活習慣病が気になる方は、普段の食事に大麦を取り入れることを考えてみましょう。



無料動画セミナーのご案内